黒沢監督がセルフリメイクの経緯を告白
1998年に公開した自作をセルフリメイクすることになった経緯について、黒沢監督は「昔撮ったものはVシネマのヤクザ映画だったのですが、脚本を書いたのは高橋洋さん、『リング』の脚本家ですが、彼の脚本がとても面白くて。あれはあれで傑作でしたが、高橋色が強いので、これを自分色に染めたいと思いました。同じ物語を一から構築したらどうなるかと思いまして」と明かす。
黒沢監督と初タッグとなった柴咲は「監督はすごい方なんです。今回はじめてご一緒したのですが、一対一で対等に話したり、セッションが心地よくて。クランクイン前に不安を払拭したいがために、監督から色々聞き出したいモードになったのですが、それは愚問でした。人間として向き合って役柄を通して監督の脳内を具現化するのが役者の役割だと改めて感じました。あの時はすみませんでした!」と、黒沢監督と顔を見合わせた。
黒沢組の常連である西島も「スタッフの黒沢監督に対する尊敬と、黒沢組独特のワクワク感があって。日本でもフランスでもどこで撮っても黒沢組の現場はこうなんだって実感しました」と、和やかだった現場を振り返り。
青木は弾丸のフランス滞在となったそうだが「監督への敬愛、人徳が現場に反映されているんですよね。時間の流れもゆっくりで、丁寧に紡いでいく。風が気持ちいい自然に囲まれたパリでの撮影は、日本人として誇らしい気持ちになりました」と、フランスならでは空気感を回顧した。
柴咲コウ、撮影の半年前からフランス語を勉強
娘を殺された父親の復讐に加担する謎多き心療内科医を演じた柴咲の怪演は、黒沢監督も「とくに目がすごく良い」と絶賛するほど。さらに、「動きがすごい。獰猛というか、『バトル・ロワイヤル』を超えたんじゃないでしょうか」と、肉体面でもその俊敏な動きに驚かされたことを告白。
西島は、「最初からスタッフとフランス語で話していて、元々話せる方なんだと思っていたら、この作品のために勉強したと聞いて驚きました。すごく努力する方なんだと」というと、柴咲は照れた様子で「それでハードル上がっちゃうから…」と返答した。
撮影半年前からフランス語を特訓した柴咲は、クランクイン前から実際にパリで生活を送り、小夜子の人物像を構築。「フランス映画として取り込む作品なので、聞き心地が悪いのは嫌だったので合格点もらえるように、集中してフランス語に取り組みました。ダミアンは事前のリハーサルでも悪くないっていう表情をしてくれて、撮影中もいろいろ提案されていて細かくセッションできたのでは」と撮影を振り返った。