コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、はむら芥さんが描く体験談を漫画にした『彼氏が私を「ママ」と呼んできた話』をピックアップ。
2024年3月16日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1.1万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、はむら芥さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
彼氏が寝ぼけて“ママ”発言…さらに将来が不安になる展開へ
作者のはむら芥さんは、実際にあった体験談を漫画にしている。今回は、付き合って半年になる彼氏と旅行に行った女性が体験した驚きのエピソードだ。
旅行帰りの電車の中、疲れが溜まった彼氏・ユキヒトは主人公・サオリの肩にもたれかかって寝てしまう。彼の寝顔を見ながら、サオリは旅行の楽しい思い出を振り返っていた。旅行中、ケンカもなく彼の穏やかな人柄を実感したサオリは“この人となら一緒に優しい家庭を築いていけるかも”と、将来のことも考え始めていた。そして、降車する駅に近づいたとき、驚きの展開がやってきた。寝ている彼を起こそうとして名前を呼ぶと――
「ありがと…ママ」
突然の“ママ”呼びに固まるサオリ。冗談なのか、寝ぼけていたのか、それとも本気だったのか…。結婚のことも視野に入れ始めていたサオリは見過ごすことができず、思いきって彼に聞いてみた。すると彼は驚いた表情で「寝ぼけてたのかな~」と恥ずかしがったため、サオリは一安心するのだった。
しかし、その後のデートでも不穏な展開が待ち受けていた。ママと一緒に作ったクッキーを持ってきたり、デート中にママの話題を出すことも多くなった。そして、実はこれまでのデート先も全てママが考えてくれたものだというのだ。
今後に不安を感じたサオリは、バイト先で相談してみたところ“いわゆるマザコンではないか”と言われる。「さっさと次行った方が良い」「素敵な家庭だと思う」など賛否両論の意見が交わされたが、一人の先輩から「あなたがそれを良くないと思っていることは確か」と言われて“ドキッ”としたサオリは、一度ゆっくり彼氏と話をしてみようと決意するのだった――。
読者からは「100年の恋も冷めるわ」「ひぇー」など、マザコンの彼氏を否定的に見るコメントから「親を大切に思うのはいい事」と肯定的なものまで、作中同様に賛否両論な意見が寄せられた。
作者・はむら芥さん「完全な悪役を作らない」
――はむらさんは体験談を漫画にしているとのことですが、『彼氏が私を「ママ」と呼んできた話』を創作したきっかけや理由などをお教えください。
長い付き合いの友人に、いわゆるマザコンの彼氏がいたことが創作のきっかけです。
それまでは私も友人も『マザコン』という単語は知っていたものの、「母親を大事にすることは良いことだよね」というくらいの認識でした。しかし実際付き合うとなると、普段通りにはいかない点がたくさんあったようで…友人はいつも「自分が気にしすぎているだけなのか、相手に変わってもらうよう言ってもいいことなのか」と悩んでいました。例えば、作中にも出てきたように、デート先を母親が決めていたり、こっそりと自分を見に来たり、家で鬼ごっこをしていたり…といったエピソードです。友人が彼と付き合っていたのは随分前のことですが、未だに話に上がるくらいインパクトの強い出来事だったので、読者の方々にも刺さるのではないかと思い、友人の許可を取ってマンガにさせてもらいました。
――投稿のラストがとても気になる展開で終わっています。続きがある本作ですが、その後の見どころをお教えください。
やはり見どころは、続きで描いたユキヒトの成長した姿です!今回のユキヒトのように、生まれた時から当たり前にしてきた母親との関わり方は、そう簡単に変えられるものではありません。また、誰にも迷惑をかけていなければ変える必要もないと思います。ただ、母親以外のパートナーと家庭を築きたいと願うなら、その関わり方を変えなければ実現は難しいと思います。本編では、実際の体験に基づいて変わるきっかけを得たところで終わっていますが、そのきっかけを得たユキヒトが、自分の選択で一歩を踏み出した姿まで描きたくて筆を取りました。自分の今までの当たり前を変えることも、変える必要があると認めることも非常に勇気のいることですが、一歩踏み出すのに遅すぎることはありません。ユキヒトのその後の姿を通じて、読者の皆さんの背中を少しでも押すことができたら幸いです!
――本作を含め、体験談を漫画にする際、特に心がけていることや大切にしていることなどをお教えください。
完全な悪役を作らないことを心がけています。例えば今回のユキヒトも、母親との関係性が原因で付き合う上で問題が出てきただけで、マザコンであること自体は悪いことではありません。また、他の作品でも同様に登場人物全員それぞれに考えや行動理由があり、描く視点が変われば良い悪いの判断も簡単に変わってしまうと思うのです。ですので、キャラクターを完全な「悪い奴」として描いてしまうと偏った価値観になりがちですし、読者が気持ちよく読める作品ではなくなってしまう気がするんです。話の性質上どうしても悪役ポジションのキャラクターは生まれてしまいますが、「罪を憎んで人を憎まず」といいますか、作者自身がその平等感を忘れないように心がけることが、作品のバランスを保つために重要だと思っています。
――今回のお話は彼氏が彼女のことを「ママ」と呼び間違えてしまったことから、驚きの展開が始まります。実際、今回のような深いエピソードはなくとも子供の頃に先生に対して「ママ」「お母さん」と言ってしまったなど、呼び間違えてしまった経験を持つ人も多いです。はむらさんには、過去に呼び間違えをしてしまったご経験はありますか?
あります(笑)
小学校の時先生を「お母さん」と呼んだことがあり、しかも恥ずかしいことに呼び間違えたことにしばらく気が付きませんでした。周りがクスクスしていて時間差でハッとしたのですが…。しかも結構高学年だった気がしますし、私もユキヒトのことを笑えないですね。
――先日からブログ上で体験談の募集を始めていて、今後もはむらさんの作品が多く誕生することに期待しています。最後に、読者やファンの方、色々な体験談をお持ちの方へメッセージをお願いします。
体験談募集は初めての試みだったのでドキドキしていましたが、既に200件近くのご応募を頂いており、本当にありがたく思っています。今後は皆さんの体験談を元に、今以上に様々なお話を発信していけると思いますので、ぜひ今後とも隙間時間の楽しみにして頂けたら嬉しいです!
これからも応援よろしくお願いします!