優しく顔や髪をなでる仕草にキュン
20歳以上の年の差恋愛を描くにあたり、スタイルが良く美しい永瀬と板谷では違和感なく釣り合ってしまい、現実味という点では整い過ぎてしまうところがある。松田とMEGUMIもしかり。一般の年の差カップルではない、さすが芸能人同士の美しさである。
ただし、年齢を隠せない身体の部位というのがある。“手”だ。若い男性の“手”というのは血管や骨が浮き出ており、目を凝らして見てみると色気があふれ出ているものである。今作のメインビジュアルカットも、キスシーンでも詩史の顔を包み込むように肩を通り首のあたりに上がってくる透の手の動きが色っぽい。マニキュアを塗った詩史の手とは明らかに違う男の“手”だ。手だけでしっかりと演技をしているシーンがいくつもあり、あの手で髪をなでられたら…などと妄想させる。
デートや2人で逢瀬を重ねるシーンでも、透と詩史が手をつないで歩く姿が印象に残る。徐々に引かれ合う透と詩史の心のつながりは、毎回身体的に求め合う耕二と喜美子のカップルよりも静かにかつ強固なものとして描かれている。それは1秒も離れたくないという、“手”の先に至るまで詩史を愛しているという細やかな描写として映った。
俳優・永瀬廉がファンを魅了してきた細やかな美
今作で大胆なラブシーンを演じている永瀬が、本格ラブストーリーに初挑戦したのは意外にも2023年1月期放送の「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS系)だ。まだ、艶やかな恋愛をたくさん演じてきたわけではない。北川悦吏子脚本のドラマで、永瀬は音楽方面でメジャーデビューを目指す青年・海野音を演じていた。主演の広瀬すず演じる、田舎娘の浅葱空豆に振り回される役で、なかなか恋が始まらない2人だったが、一つ屋根の下でそれぞれ夢を追いかけて支え合ううちに必要な存在であることに気付いていく物語。互いを大切に思い合う者同士が“手をつなぐ”時間を温かく描いていた。
その以前で俳優としての永瀬の知名度を上げたのはNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」(2021年、NHK総合ほか)だろう。清原果那演じるヒロインの永浦百音(モネ)の成長物語において地元の幼馴染で同級生の“りょーちん”こと及川亮役でレギュラー出演した。東日本大震災で心を痛め他人に心閉ざす時間を経ていたが、ゆっくり立ち上がっていく姿が感動を呼んだ。半年に渡り放送される朝ドラの最終回で、仲間たちと一緒に百音を囲んで座り、りょーちんが「おかえり、モネ」と“タイトル回収”したセリフを言ったことからも、物語のキーパーソンであったことが伺える。奇しくも、その場面でもりょーちんが百音の手をギュッと握って元気つける手のアップが映し出された。
永瀬の手に注目するほど、引き寄せられるかのように彼の手の美しさも目に付くようになった。清潔さのイメージが何よりも大切であろう手指消毒剤「手ピカジェル」のCMキャラクターも務めている。アイドル活動をしているときだって、カメラの向こうにまで届くように「おいで」と手を伸ばす仕草や、コンサート会場の遠くにいるファンにまで大きく手を振る。その細やかな気遣いは、さすがアイドルトップクラスといった輝きを放つ。“全角度国宝級”と言われるだけに、永瀬と仕事をした人は手の先まで視聴者に届けたくなってしまうのかもしれない。ドラマ「東京タワー」はTVerで1~3話と最新話を無料配信中。東京タワーの輝く夜景から、永瀬の手先にわたるまで様々な美しさを堪能できる。
◆文=ザテレビジョンドラマ部