松田美由紀、“ニッポン・シャンソン”の名曲に夫・松田優作を思う「歌いながら自分を癒やしている感覚がある」
松田美由紀インタビュー「『黒い鷲』は歌いながら自分を癒やしている感覚がある」
――歌い終えての感想を教えてください。
松田美由紀:私の年齢で、“人生初”がまだあるのかと思いました。まさか、自分が皆さまの前で歌を披露できるとは思っていなかったんです。実は中学生から歌をやりたいという夢があったのですが、女優の道に進ませてもらったんです。夢が一つ叶ったなと思い、すごく幸せな気持ちです。
今回の出演にあたって、子どもたちも応援してくれました。収録では、緊張してクミコさんのところに駆け寄ったら、「美由紀さん、歌は自分のために歌うのよ」とおっしゃってくれて、すごく安心して歌うことができました。
――今回披露された「孤独」と「黒い鷲」は、どういった思いで選曲しましたか?
松田:(両楽曲の作詞・作曲を手がけた)バルバラさんが歌詞に込めた思いとは違いますが、私の中では「黒い鷲」は優作なんです。この「黒い鷲」は歌の中に優作が出てきた。そういう感覚は初めての歌なんです。
主人とは10代の時に出会って、20歳で結婚し、28歳の時に先立たれました。その強い衝撃があって、自分の中でなかなか消化しきれないトラウマなんです。日常生活では主人は出てこないのですが、表現をする時は出てくるんです。本当につらかったんだなと思い、歌いながら自分を癒やしている感覚があるんです。
――歌いながら涙を流されたように見えました。
松田:「“黒い鷲”が空を裂いてやってくる」という歌ですが、うれしいことだけじゃないんです。支配されているようだけど、その支配された記憶にすがりたいような…。この曲は、人間の複雑な感覚が歌になっていると思っています。
バルバラさんのスピリッツみたいなものを歌っていきたいと思っています。本当の歌詞は「小さな時のように星を取りに夜の空へ」ですが、私はライブでは「小さな子どもたちと星を取りに行こうよ」と歌っているんです。この歌を歌うと、毎回リハーサルから泣いてしまうんです。
――シャンソンの魅力はどういったところにあると思いますか?
松田:シャンソンを歌うようになったきっかけは、宮本亜門さんの音楽劇「三文オペラ」の歌唱シーンを見た、シャンソンを歌う友人から勧められたことでした。シャンソンは詩がとても美しく、ロマンチックなものが多いです。ライブで歌う時は、なるべくストレートに歌うようにしています。短編小説、短編映画のようなものだと思っています。
いろんな物語があって、しかもちょっと粋。私は歌う前に原曲を朗読したりするんです。シャンソンはワインやシャンパンが似合う、そんな世界観があるので、若い人にも楽しんで欲しいと思っています。
松村雄基インタビュー「少しでも越路さんやシャンソンの素晴らしさを伝えられたら」
――シャンソンとの出合いを教えてください。
松村雄基:シャンソン歌手のソワレさんに勧められました。歌ってみると、ロックやポップスとは違って、3拍子が多くて難しかったんです。
でも、美しい詞のおかげで情景が浮かびやすかった。その情景をどうやって伝えるかという点では、芝居と似ていると思っています。
――今回は「マイ・ウェイ」「そして今は」を歌いました。どんな思いを込めましたか?
松村:僕は越路さんが亡くなった1980年にデビューし、越路さんの命日は僕の誕生日(11月7日)でもあります。そして僕をシャンソンに導いてくれたソワレさんは、越路さん研究の第一人者。
だから僕はご縁があって、ここに呼ばれたんだなと思っています。このご縁に感謝して、少しでも越路さん、シャンソンの素晴らしさを伝えられたらと思っていました。
――最後に、シャンソンの魅力を教えてください。
松村:シャンソンは人種、国、年齢も関係ない懐の深い音楽です。人生は捨てたもんじゃないという人間讃歌で、僕も励まされています。
6月30日(水)夜9:00-10:54
BS朝日にて放送
https://www.bs-asahi.co.jp/nippon_shanson/