“白か黒か”をはっきりさせる世界で「色で遊べると面白いのではないか」
――キャラクターの名前はどのように決められたのでしょうか?
明墨という主人公の名前がまず決まって、最初の企画書の段階から他のキャラクターの名前にも色を入れるという案がありました。その中で、統一したコンセプトに変えていったというのはあります。
例えば、緋山は元々檜山という字だったのを緋色に変えたり、珠城りょうさん演じる沢原麻希の麻を亜麻色にしたり。桃瀬も元々は百瀬という字でしたが、脚本を作る段階で変更されていきました。
「白か黒かをはっきりさせる」というのが法律ではよく形容されるので、色で遊べると面白いのではないかと、脚本の福田哲平さんと共に考えました。
――それぞれの色が持つ意味について教えてください。
明墨の“墨”は、分かりやすく黒と白の中間の曖昧な感じを表現しています。赤峰の“赤”は、非常にエネルギーのある熱量の高い人間ということ、紫ノ宮の“紫”は、赤に少し冷静さを足しつつも内にみなぎるようなものがあるということを含んでいます。それこそ、この3人の色を掛け合わせるとドラマのテーマカラーの至極色になっていて、そこは一つの狙いだったりもします。
白木の“白”は、純粋さ。いろいろと含んでいそうですが、もしかしたら彼女が一番真っすぐな思いを持っているのではないかと思っています。青山の“青”は、実は僕もまだつかみかねていて…。すごく爽やかな青なのか、藍色に近い深い青なのか、スカイブルーなのか。僕は個人的に青が一番好きな色なのですが、どれを青と言うかは人それぞれで、いろいろなものに化けられる感じが青にはあると思って付けました。
緑川の“緑”は、ナチュラルなイメージです。緑ってすごく調和される色というか、どこにいてもそこが一体化してくような感じがありますよね。主張しすぎないけど、そこに存在することがすごく意味を持つというか、そんなような意味合いです。
桃瀬の“桃”は、このドラマの中での愛の象徴です。なんだかんだで、このドラマの中心には愛というものがあると思っています。人間が何かを働きかけようとするときのほとんどは愛情が動機になっていると思うので、そういった意味で、もしかしたら桃瀬がこのドラマの軸になっているのではないかなと、改めて第9、10話を見て感じています。
――緑川にも色が付いているので、「絶対仲間だ」というような声も上がっていますが…。
そうですね。皆さん、「緑川が寝返るのではないか」という考察をしてくれているので、そこは最終回を見て楽しんでいただければと思います。
「より成熟したキャラクターにしてから撮りたいと思っていた」
――これまでの放送回で特に印象的だったシーンを教えてください。
第2話の最後で、殺人の証拠である緋山のジャンパーが赤峰の目の前で廃棄場に捨てられて、そのあと赤峰が事務所に戻ってきて明墨と対峙するシーンがありました。あそこには本当に思い入れがあります。
というのは、撮影の順番として、どうしてもその対峙シーンを廃棄場のシーンを撮影した後に撮りたかったんですよ。赤峰が廃棄場でどんな感情を抱いて、明墨の前にどう立つかというのが大事だと思っていたので。ですが、廃棄場での撮影が何回か延期になって、対峙シーンも1カ月ぐらい先延ばしになっているんですよね。
そんな中で撮ったシーンが、やはりすごく濃いものになっていて。当然1カ月あると他のシーンの撮影もしているので、それぞれのキャラクター性も固まってきているし、赤峰は、実はあそこでジャンパーを拾っているということも踏まえた感情の中で明墨の前に立っているので、すごく印象に残っています。
第1話冒頭の接見室のシーンも、実は、撮影を2カ月ぐらいやった後に撮ると決めていて。理由としては、あのシーンが第8話とつながるというのもありますが、視聴者の方が初めて見る明墨を、より成熟したキャラクターにしてから撮りたいと思っていたんです。それもあって、あのシーンにも強い思い入れがあります。
――回を重ねるごとに赤峰が明墨に似ていくといった声も上がっていますが、赤峰の成長や変化はどのように想定されていたのですか?
正直に言うと、僕らは本を作っている段階では、北村くんがこうやって演じるということは想像できていなくて。なので、これはもう完全に北村匠海という俳優のプランニングが全てだったなと思いました。そこは本当に見事というか、僕らが想像していたものの何十倍にもなっているという実感があります。
本来はこちらが演出しなくてはいけないのに、途中から赤峰と完全に同化していて、赤峰の変化の過程をすごく緻密に計画しながら演技をしてくれました。緋山にジャンパーを見せるところぐらいから、もはや赤峰が怖くなってきたくらいです。ゾクゾクしました。
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