コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、「共感する部分があって刺さる」と話題の人気作品「愛されたくて整形しました」(著:鈴木倫/コミックシーモア・ソルマーレ編集部)をピックアップ。
作者の鈴木倫さんが5月22日にX(旧Twitter)で同作を投稿。そのツイートには合わせて約4万のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事では鈴木倫さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについてを語ってもらった。
元から可愛ければこんなことしなくていいのにな…
鈴木倫さんは独身の28歳。結婚前提で2年半付き合っていた彼氏がいたのだが、金遣いの荒さに耐えかねて別れを告げた。
こうして築90年のアパートでの一人暮らしが始まったのだが、一人の夜が寂しくてたまらない。そんな寂しさを埋めようと、鈴木さんは元々彼の岡田と連絡を取るようになり、徐々に依存していってしまう…。
そんなある日、岡田と共通の知人を交えて飲み会をした。途中まではワイワイ楽しく飲んでいたのだが、恋愛の話を振られた岡田が衝撃的な一言。
「俺さー、ブスとしか付き合ったことないんだよねー」
これを聞いた鈴木さんは涙を堪えて笑うのが精一杯。そしてその日の帰り道、泣きながら整形のカウンセリングを予約した…。
本作は、元カレの軽はずみな発言に深く傷つき、「愛されたい」という想いから整形を決意した女性の物語。読者からは「幸せになって欲しい」「共感する部分があって刺さる」「学んだ教訓が多すぎます」「気持ちが分かる」など多くのコメントが寄せられている。
「整形に対して否定的な世の中に憤りを感じ…」作者・鈴木倫さんが語る創作秘話
――「愛されたくて整形しました」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
人の顔面に対して優劣を言う癖に、整形に対して否定的な世の中に憤りを感じて描いちゃいました! 大抵のことって、努力である程度どうにかできると思うんですよ。勉強然り、運動然り。けれど、顔面ってメイクしたとしても限界があるし、初期装備の差が大きすぎないですか?
その努力でどうにもならない部分を、「整形」って形で良くすることに「親からもらった身体に傷をつけるな」とか「人をだましてる、ズルをしてる」とか言われることがとても悲しくて悔しかったんです。
「整形を否定するなら二度とブスって言葉使うなよ。」「身体に傷をつけるなって言うならピアスもすんなよ。」「人をだましてるって言うなら一生嘘つくなよ。」って思いました。
けれど、そういう言葉を言う人たちに本作を読んでもらおうっていう気持ちは無かったです。寧ろ「ブス」って言われたことのある人や自分と近い境遇の人が共感して、その人たちの「自分を否定する気持ち」をちょっとでも軽く出来たらいいなって思って描きました。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「整形で顔は変わるけど 心まで変わるわけじゃない 整形は『前向きに生きるための後押し』のような物」というセリフです。
整形って劇的に顔も人生も変わるようなイメージを持っている方もいると思うのですが、そんな魔法のようなものじゃないんです。顔がちょっとだけ変わって、今までよりちょっとだけ笑顔でいられるようになって、ちょっとだけ前向きになれただけなんです。
本作は、整形を変に肯定する作品ではなく「自己肯定感」が主軸の作品です。このセリフには「選択肢として整形があり、それを通じて自分と向き合ってちょっとだけ前向きになれた一人の人間のリアル」が集約できたかなと思います。
――「教訓が多い」「リアルで引き込まれます」など大きな反響がありましたが、コメントを読んだ時のお気持ちをお教えください。
「ちゃんと届いてよかったー!」って思いました。本作は2022年にリリースされたものだったのですが、2年の時を経て今になって沢山の方に届いたことが嬉しかったです!
本作は、私のように見た目のコンプレックスがある方々に共感してもらいたいと思って描きました。その為には、私自身の歪みや恥ずかしい部分、惨めな部分と向き合わなければなりませんでした。それはもう、なかなか苦しい作業で号泣しながら執筆していたので報われてよかったです!
――本作を通して伝えたいメッセージがあればお教えください。
「ポジティブでいること」「自信を持つこと」が推奨されているけれど、無理にそうならなくてもいいんだよって伝えたいです。自己肯定感ってあげようとしても簡単にあがるものじゃないですし。
無理に前向きになろうとするのって辛いじゃないですか。ネガティブだったり、自信がなかったりする自分自身を認めてあげられたらいいなと思います。
自己肯定感低くても大丈夫ですよ! 私みたいに、とんでもなく情緒不安定で男性に依存して生きているどうしようもないヤツでもなんとかやっていけてるんだから! 自分のことを否定する辛さを抱える人の気持ちが、ちょっとだけ軽くなったらいいなと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
楽しく漫画を描いて沢山楽しんでもらえるハッピーハッピーな人生にしていきたいです! 漫画は私のX(@suzu_kiri_n)で公開しています。今後も美容医療はメンテナンス程度に受けるので、整形漫画を描くこともあるかと思います。
本作は「自己肯定感」をテーマにしたのですが、それは今後も私の中の永遠のテーマです。今後の作品で整形に関しない漫画でも、自己肯定感に関するエピソードは描いていくと思います。これからも読んだ方が「ちょっとだけ元気になれる漫画」を描いていきたいです!
――最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いいたします。
「愛されたくて整形しました」を読んでくださってありがとうございます。なかなかパンチのある内容だったと思いますが楽しんでいただけたでしょうか。今後も、騒がしい漫画をどんどん描いていくので、読んでくれたあなたも描いている私も一緒に楽しんでいけたらいいですね! これからも鈴木倫の漫画をよろしくお願いします。