コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、石田ゆうさんがX(旧Twitter)に投稿した『インターネットがとまった夜の話』をピックアップ。
作者の石田ゆうさんが5月20日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、1.3万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、石田ゆうさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
インターネットが使えない世界で交わることのなかった2人の物語
朝起き、仕事に取り掛かろうとしたがパソコンが使えない。インターネットが止まってしまっているのだ。大きい電波障害で、携帯以外にも色々なものが使えなくなっている。街中のみんなが電波を探している。そんな街中で焦っている私に、バニーガール姿のある女性が声を掛けてきた。「私ネットが使える場所知ってます。一緒に行きます?」
ネットが使える…?しかしそれは嘘で、ぼったくり店に連れていかれるのかも…。付いていくか迷っていると、女性は私のスマートフォンを掲げて言った。「え!?すごい!!!あなたのスマホ!!!ネット使えるんだ!!しかもこのスマホWi-Fi飛ばせるんだ~」この声に街中の人が私に集まってくる。「嘘っていうのはこういう事を言うんですよ」女性はそう言い放ち、私の手を引っ張った。
インターネットが使えると信じてしまっている街中の人たちから逃げる私と女性。そんな女性は風俗嬢だと言う。インターネットが使えずお客さんと二人きりで危険な状況になりながらも助けが呼べなかったため、そのまま逃げだしてきた。だからバニーガールの格好をしていた。女性の素性も明らかになり、私と女性の間には信頼感が生まれていた。
ただそんな二人に衝突が起きた。私には長い期間、職が無かったことがあった。無職だと、日常の何でもないことが後ろめたくなる。インターネットが使えないと仕事が出来ない。無職に戻ってしまうのではないかという恐怖があった。そんな私に女性が「コンビニバイト募集してましたよ」と言ったことにより、私は「何が分かるんだよ」と女性に言ってしまった。緊迫した空気が流れる中で、女性はお店の黒服につかまってしまった。
そんな黒服に連れていかれる女性を見てつい私は「こっこの携帯ネット使えます!なんなら皆さんの携帯も!ネット使えるように出来ますっ!」と言ってしまった。そして、その携帯電話を黒服に投げ渡すと、黒服に大勢の人が集まってきた。その隙に私は女性の手を引き、黒服から逃げたのであった。
女性を馬鹿にしてしまったことは嘘より何倍も最低だ。ただ謝りたい一心で、女性を助けたのだった。黒服から逃げようとした時、街中には電話が鳴る音が響いた。インターネットが復活したのだ。これで元の仕事に戻れる…。女性に助けてもらった私が女性を助けることが出来たこの出来事の後、女性は私に「あんまり無理しないようにお仕事頑張って下さいね」と声を掛けてくれた。そんな私に大きな疲労感が襲い掛かり、部長に休みの連絡を入れたのであった。
インターネットが使えない世界で助け合う、様々な背景のあるおじさんと若い女性を描いた本作。ネット上では「絵が凄い綺麗」「可愛い絵を描くのが上手すぎる!」といった絵に魅了された声や、「こうなればいいのに…」「こういう気付きを漫画にできるの凄すぎる」といったストーリーに魅了された声が多く寄せられた。
「スマホですべて解決してしまうならスマホを使えなくしてやろう。」作者・石田ゆうさんの語る創作の裏側
――『インターネットがとまった夜の話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
この漫画は「面識がなく共通する物もないふたりの話」を描いてみたいとスタートしました。じゃあ、このふたりはどうやって出会うんだろうな…と考えていたんですが、これが全く思いつきませんでした。趣味や職場や属性…共通するものが無い中でポツポツと出てくる「道に迷った」「雨の日に傘を忘れた」「終電を逃した」etc…。でも、考えつくものがことごとくスマホで解決してしまうんです。そうやってうーんうーんと悩んでる時に電波障害でスマホが使えないニュースを目にしました。「これだ!」と。スマホですべて解決してしまうならスマホを使えなくしてやろう。これが『インターネットがとまった夜の話』になった理由です。
――『インターネットがとまった夜の話』 の中で気に入っているシーンがありましたら、理由と共にお教えください。
ヒロイン(ルカ)が電波障害の中で「主人公のスマホはネットが使える!」と嘘をついて、それを聞いた人々から追いかけられる場面があるのですが、そこで逃げ込んだ細い路地のシーンが気に入ってます。作画がいい感じになりましたし、ヒロインと主人公の人間味も出せたかなぁと思います。
――実際にありそうで無い状況で、関わることのなさそうな二人の関係の変化を描いた本作ですが、どこから着想を得ているのでしょうか。
ほとんど一つ目の質問で答えてしまった気がしますが、本作の根っこにあった「関係のないふたりの話」というのは「関係があるふたりの話」をたくさん見ていたので、そうじゃ無いものを見たいという感覚からきました。(気難しい細かな説明は単行本のあとがきにながながと書いたので買って気になった人がいれば読んでみて下さい)
――石田ゆうさんは本作に加え、様々な女性の絵をX(旧Twitter)投稿されており、その絵に多くの読者が魅了されています。絵のモデルはいるのでしょうか。また、描くうえで意識していることなどありましたらお教えください。
基本モデルはいません。描くうえで意識していることは、「この絵の中の人間って実際に存在しているんじゃないか」と思ってもらえる様に描こうとしています。
――石田ゆうさんの今後の展望や目標をお教えください。
連載したいです。そして面白いものを描きたいです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
自分の漫画を読んでくれる方、絵に反応をくれる方、本当に感謝しています。そういう方々がいるから漫画や絵を描き続けられていますし、こうやってインタビューのご依頼を頂いて話が出来る機会を頂けたりもします。ほんとにありがとうございます。
今後はペースを上げて漫画を描いていきたいと思いますので、見かけた際は読んで頂ければ幸いです。
長文になりましたがここまでインタビューを読んで頂いてありがとうございました。