二宮和也、中谷美紀、大沢たかおのトリプル主演が話題をさらった2023年秋クールの月9ドラマ「ONE DAY ~聖夜のから騒ぎ~」のBlu-ray&DVD BOX化が決定。6月19日(水)にリリースされた。本作は二宮演じる記憶喪失の逃亡者、中谷演じる報道キャスター、大沢演じる孤高のシェフという、全く接点のない3人が過ごすクリスマスイブ 。“たった1日”のできごとを1クールかけて描いた異色作だ。監督は「HERO」シリーズ、映画「マスカレードホテル」シリーズなどを手掛けた鈴木雅之。本ドラマはどのようなアイデアから生まれたのか。鈴木監督に当時の撮影を振り返ってもらった。
テレビドラマは実験やチャレンジが必要な世界
――本作はクリスマスイブという「たった1日」の出来事を、3人の異なる視点から1クールかけて描く思い切った手法でした。この演出、テーマを取り扱うことになったきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけというほどのことは実はあまりなく、局のプロデューサーからいろいろ制約のある企画を打診されまして(笑)。1日であるとか、3つの話であるとか。さすがに縛りが多すぎませんか、と(笑)。
ただ、とても実験的なやりがいも感じて、面白いとは思いました。僕としては制約を面白さに変え、やるなら徹底的にと思ったわけです。テレビドラマを面白くするには、やはりいろいろな実験やチャレンジもしていかないといけません。自分では確信的な自信があったわけではないですが、それでクリスマスイブにしてみたり、記憶喪失にしてみたり。
実は、「ある1日」というのは僕も以前から持っていた構想で、こういう制約を作るのは嫌いではないんですよ。連ドラでたった1日を描くというのはむしろ乗り気。チャレンジする材料としては、面白いと感じるくらいでした。ドラマって1時間の中で時間が20年飛躍することもあれば、1時間を8時間かけて見せることもできます。そういう意味でいうと、1日を11本(11話)かけて描くというのは非常に興味深いアプローチですよね。
――さらに面白いのが、各話でなく、1話の中で主人公が切り替わっていく構成。映像作りではどんな点を意識しましたか?
主人公3人、3つの物語が独立しているわけで、微妙に関わり合ってくるにしても、それぞれが単体で成立するようにしたことですね。色であったり、音楽であったり、そうした環境から棲み分けています。
ですから、二宮くんのパートはなるべくモノトーンに。中谷さんのパートはくりっとしたカラフルな色に。大沢さんのパートは暖色系のカラーに。音楽はテクノとオーケストラという風に、最初から全体を変えていくように組んでいきました。
――そうした棲み分けがある中で、二宮さんたちの芝居の印象。演出付けはどうされましたか?
二宮くんって今までは意外とあっけらかんと仕事をしていくタイプでしたが、最近は意欲が大きくて、やりたいことがいっぱいあるみたいですね。彼のパートに関してはちょっとクールというか、ダークというか。出だしからずっと夜のシーンにして、悪い系の匂いでいくように話しました。
――大沢さん、中谷さんパートはいかがですか?
大沢さんと中谷さんと仕事するのは初めてでしたが、僕、実をいうと「JIN -仁-」(大沢、中谷の共演作)の大ファンなんですよ。だから今回のキャスティングはすごくうれしかったですね(笑)。「キングダム」もですが、大沢さんは役によって自分を変えていく要素が強い方。今回は少しコメディーを取り入れたので、舞台的な世界観をお願いしました。
中谷さんに関しては、やっぱりキャスターという仕事感を出してほしいと。小規模な報道局を1人で背負っているような感じでしょうか。匂いとしては、有働由美子さんみたいなね。それを説得力のある芝居で見せてくるからさすがですね。
「ONE DAY ~聖夜のから騒ぎ~」では、鈴木監督の「気持ちいい画」を封印
――以前のインタビューにて、シンメトリーな構造など、鈴木監督の特徴的な演出は「気持ちいいから取り入れている」とお答えいただきました。クリエイティブな積み重ねを経ていく中で、「気持ちいい演出・映像」が変化していくのを感じたことはありましたか?
最近、「またやってる」みたいに言われるんですよね(苦笑)。いやいや、またやっているんじゃなくて、元々そういう画(え)が好きでやっているんですよ。以前のインタビューでは、それを「気持ちいいから」と例えたのかなと思います。
やっぱり撮っていて、画を見ていて、「気持ちいいな」と思うことは頻繁にありますよ。カメラやスタッフももう僕のことを分かってくれているから、ふと覗くとそういう画を撮ってくれている。別にそうでない画が嫌いだというわけではないですが、好きに撮っていくと、自分の気持ちいい画になりますよね。
――では、本作の中では「気持ちいい」と思えた瞬間はどこになりますか?
いえ、今回はそれをちょっと封印しました。3つの話を同じ志向でやると全て同じになってしまうので、大沢さんのレストランパートにはシンメトリーな世界観を若干取り入れましたが、サスペンスである二宮くんと中谷さんのパートでは固執しないように、画の撮り方を意識的に変えています。シンメトリーな画って、サスペンスにはあまり向かないんですよね。ですから、1時間の中に画の違う3本のドラマがあるというのが基本の考え方。
――それが今回の映像のポイントと言える部分ですね。
でも大変なんですよ、それはそれで。3本分撮らないといけないわけですから(笑)。今回の商品化(Blu-ray&DVD BOX)には3つの物語に編集された「特別編」が収録されています。1本ずつを繋いでも面白いものを撮っているので、こちらも楽しんでいただきたいです。
――本作は忘れられない1日を書いた作品です。鈴木監督が映像に進む道を決めた忘れられない1日とは?
中学生のときに、「小さな恋のメロディ」という映画が流行ったんですよ。それを観たときですね。僕はエリートじゃなかったので、「よし、映画やろう!」って。他のことがあまりできなかったから、周りとは違う方向で邁進したという感じです。
――最後に、鈴木監督の新作を待つ映画・ドラマファンにメッセージをお願いします。
この歳になってですが、少しは自分も変わっていこうと思っています。マンネリ化しないように頑張って作っていこうかな、と(笑)。自分の引き出しだけで生きていかないで、新しいものを見つけようと思っていますので、飽きないで観ていただけるとうれしいです。
https://www.fujitv.co.jp/oneday_christmas_ado/
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