阿部サダヲのサイコパスっぷりが恐ろしい…白石和彌監督が手掛ける映画「死刑にいたる病」のあらすじと見どころに迫る
榛村の巧みな話術に翻弄されていく雅也
本作では、榛村と対話を通して心情が変化していく雅也の姿も見どころの一つ。幼少期から父親の暴力に苦んでいた雅也は、自分のことを気にかけてくれる榛村を心の拠り所として、彼のパン屋に頻繁に通っていた過去がある。希望の大学に行けず、友達もいないパッとしない生活を送っていた雅也だが、榛村が主張する冤罪について調べ始めたことで、いつしかそれが生き甲斐になっていく。
そして榛村を調べていくうちに、“本当に榛村は殺していないのではないか”という疑念のもと、少しずつ榛村に惹かれ、面会を重ねる中で心酔していってしまう…。その様子はまさに“洗脳”や“支配”と表現するにふさわしく、映画「羊たちの沈黙」のレクター博士とFBI訓練生・クラリスの関係を彷彿とさせるものだった。榛村の言葉巧みな話術によって、雅也はある行動に走るのだが、未来ある若者が闇落ちしそうな描写は本作でも印象的なシーンとなっている。
また、物語に大きく関わってくる謎の男・金山を演じた岩田剛典の演技にも注目。金山は事件の真犯人候補として途中から登場する人物で、顔の半分が髪で覆われ、怪しげな行動も見せる。普段“華やかなオーラ”を放つ岩田とは真逆の人物となっているが、作中で岩田は見事に陰気なオーラを漂わせ、金山役が岩田だと気付けないほどの演技を披露している。さらに、情緒不安定で意思が見えず、自身に大きな秘密を抱えている雅也の母親・衿子役を中山美穂が熱演。彼女の視聴者を不安にさせる演技も圧巻だ。
登場人物たちがそれぞれ“闇”を抱えている本作では、衝撃のラストを迎えることですべての点がつながり、体感したことのない感情が湧き上がってくるだろう。実力派俳優たちによる演技合戦や、先の読めない展開をスリリングに楽しめる映画「死刑にいたる病」、先に紹介した作品以外にも阿部が出演した「舞妓Haaaan」「殿、利息でござる」「シャイロックの子供たち」「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」などが、現在動画配信サービス・Huluで見放題配信中。