コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、「ヤングキングBULL」にて連載中の、お金と薬物が交差する、社会の裏側を描いたスリリングな漫画『銭麻(せんま)』をピックアップ。
作者の中田あもさんが2023年12月29日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、いいね数2.1万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、中田あもさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
家出少女と薬物が交錯する…歌舞伎町を舞台にした『銭麻』
“星乃やむ”は中学校から不登校になり、最低賃金でフリーターとして働く日々を送っている。家庭では、母親の彼氏から襲われ、やむは家に居場所を失い、ついに家出を決意。行き先もなく、新宿にあるSNSで話題のセー横に行くことを決め、人気のギャオ熊ちゃんに会うために向かうことになる。
新宿では、仲間たちとお酒を片手に冗談を言い合いながら、一瞬の自由を感じるやむ。しかし、その自由も長くは続かない。彼女ら全員でホテルの一室に泊まるが、やむはすぐに家出少女たちが騙されて、管理売春させられていることに気づく。危険が迫る中、やむはすんでのところでその場から逃げ出すことに成功する。
逃げた先で生活費を稼ぐため、やむはキャバクラで働き始める。キャバクラで親しくなった黒服の男性に惹かれ、彼の家に上がったものの、そこで彼が薬物を栽培していることを知ってしまう――。
物語を読んだ人たちからは「どんどん悪い沼にハマってる」「このままだと幸せにはなれなそう」「みんな真っ当に幸せになってほしいね」「どんどん狂ってく」など、反響の声が寄せられている。
薬物をテーマにした物語の誕生秘話
――『銭麻』を創作したきっかけや、着想を得たエピソードを教えてください。
前作の『かしこい猫もも太』という作品で、主人公の隣人が薬物栽培をしていたという話を書きました。
それを読んだ編集者の方から、「次は薬物栽培をしている人を主人公にして描いてみない?」という提案をいただきました。
『トレインスポッティング』や『ザ・ビーチ』など、薬物を題材にした映画が好きだったこともあり、その提案に乗ったのがきっかけです。
次々と海外で合法化が進み、大麻グミや合成カンナビノイドなど、話題に事欠かない題材を描けてラッキーだったと思います。
――主人公や主要キャラクターの設定やデザインのこだわりを教えてください。
見た目と名前、性格が一致するキャラクター作りを心がけています。
主人公の諭吉は、貧乏でケチな性格なので、髪もあまり切らずボサボサのままです。
服を買うお金を惜しんで、いつも中学時代のジャージに便所サンダルを履いています。
見た目はダサいですが、人目を全く気にしないところは、逆にかっこよさを感じる部分もあるかもしれません。
――作中で特に印象的なシーンやセリフがあれば、その理由とともに教えてください。
老人ホームで太麻を売り、お年寄りたちが太麻を楽しんでいるシーンがあります。
文字にするとショッキングな場面に思えますが、幸せそうに太麻を楽しんでいるお年寄りの姿が描かれたことで、読者からも好評をいただきました。
後から知ったのですが、海外では実際に大麻が支給される老人ホームもあるようです。
――『銭麻』の物語の中で、読者に特に伝えたいメッセージやテーマを教えてください。
大学生など若者による大麻に関わる犯罪が増えていますが、『銭麻』を読んで「簡単そうだし自分もやってみよう」とは思わず、物語を通して疑似体験を楽しんでもらえたらと思います。
――創作において最も重視している点や、こだわりがあれば教えてください。
なるべく新しい題材を取り入れるよう心がけています。
『銭麻』では、執筆当時まだそこまで有名ではなかったトー横(作中では「セー横」という名称)を舞台にしたことで、多くの人に作品を知ってもらうことができました。
若い読者に読んでもらえたことも、嬉しかったです。
――9月24日発売の最新4巻について、読者が楽しみにしている点や見どころを教えてください。
第1巻で逃亡したツナが、メインとなる巻です。
諭吉が公園で強力な太麻に出会い、躍進している間、ツナはある“モノ”に出会います。
これまで以上に過激な内容となっており、読む人を選ぶかもしれませんが、耐性のある方にはきっと楽しんでいただけると思います。
――最後に、『銭麻』のファンやこれから読もうとしている方々へメッセージをお願いいたします。
お読みいただきありがとうございます。
作者自身も憂鬱になるようなひどい展開が続きますが、どうかひかずに、これからも読み続けていただけたら嬉しいです。
レビューやSNSでの投稿など、読者の皆さんからの反応が何よりも励みになっています。
これからも楽しんでいただけるようがんばります。