当時から“いた人”をちゃんと書きたいと強く思っていました
――“LGBT”や“夫婦別姓”のことを作品で描こうと思った背景をお聞かせください。
もともとこの作品で人権や法律について描くということではあったので、自分の中では“挑戦”や“尖った”ということではありませんでした。憲法第十四条で“皆が平等である”ということが書かれている国ではあるものの、もちろん昔に比べたら良くなっていることはいっぱいあると思いますが、今もまだなかなか周知されていないことによって平等ではない扱いをしている人がいるということが事実だと思うんです。それら“平等ではない”ことが、今、令和の世で始まったのかというとそうではなく、トラちゃん(寅子)たちが生きている時代からあったことで、もっと言えばトラちゃんが生まれる前から存在したことが大半なんですよね。
意図的か無意識かは別として、大半の方々が当時見ないようにしてきたことをきちんと見せることに意味があるんじゃないかと。当時から“いた人”をちゃんと書きたい、という思いが強かったです。
――視聴者の方にはどのように受け取ってほしいですか?
“朝ドラ”という作品にいろいろなセクシュアルマイノリティーの方や、外国の方が出ることで何か思われたりする方もいるかと思うのですが、当時から現在まで、70年以上経った今も基本的に何も変わらない問題があるということに、“どうしてなのかな”と、思いを馳せていただけたらうれしいです。よく盛り込みすぎと言われますが、私的には今までが切り捨てられたり省かれたりしてきただけだと思っています。
――この作品の大きな柱の一つに憲法第十四条があるかと思います。どのような思いがありますでしょうか?
三淵(嘉子)さんをモデルに描くとなった時に、日本国憲法を最初から最後まで初めて読んだんです。改めて読んで、一番心に響いたのが第十四条でした。きっとこれが公布されたら宝物のように感動するだろうなと当時の人々に思いを馳せましたし、いまの私たちにとっても大事なことだけれど本当に世の中で果たされているだろうかという気持ちが大きかったので。“第十四条だけでも覚えて帰ってください”というくらい、どんな題材を描いていても第十四条に戻ってきてしまうんですよね。生きていく上で、人らしく生きるために、本当にスタートラインにあることなんじゃないかと思っています。
――第十四条を山田轟法律事務所の壁に書くアイデアは吉田さんが考えられたのでしょうか?
私は“紙に書く”って書いていたんです、“壁に貼ってある”って。なのでまさか壁に書くとは!って(笑)。でもよねなら書くかも、って思ったのですごく好きな演出だなと思いました。壁にずっと残っていることで象徴として使われていますし、すごく好きな演出であり、好きな美術ですね。