三世界目:映画「ペナルティループ」
何度でも復讐できるプログラム=ペナルティループ。若葉演じる岩森淳が、最愛の恋人・砂原唯(山下リオ)を殺めた犯人・溝口登(伊勢谷友介)への復讐殺人を何度も繰り返していく模様を描く。
朝6時に目覚めると、時計からいつもの声が聞こえてくる。日付は6月6日。岩森は身支度をして家を出て、唯を殺めた溝口を殺害し、疲労困憊で眠りにつく。翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、溝口もなぜか生きている。そしてまた6月6日である今日も、岩森は恋人の仇討ちを繰り返す。その復讐ループの中で岩森の心境が徐々に変化していく。
非現実的な世界のはずなのに、どこか現実の延長、近未来だと思わせる本作。浮かばれない情念を抱える被害者側の遺族や恋人らのための救済プログラム。被害者側が加害者側になる。ないはずの世界なのに、あるように思えてしまう。
同じようなシーンの繰り返しで、登場人物も少ない。だが、飽きさせない。若葉×山下、そして若葉×伊勢谷のどこか違和感があるが、どこまでもナチュラルな芝居は癖になる。同時に、アンビバレントなこの世界観をより一層引き立てている。
スイッチ一つですべてが変わる「若葉竜也の佇まい」
それぞれの作品の世界で生活する若葉だが、役柄に引きずられることはないという。「僕は“仕事は仕事”という考え方の人なので、そこでメンタルをやられて、ほかの仕事に悪影響を与えるとか、プライベートまで崩してしまうということは決してないんです。一個一個、スイッチを切り替えてやっているので、そこは大丈夫です」(引用:若葉竜也が華麗なる転身を振り返るチビ玉から演技派俳優への軌跡とは)と過去のインタビューで語っていた。
スイッチの切り替えがはっきりしているからこそ、さまざまな作品世界で違う人物として生きられるのかもしれない。“パチンッ”とスイッチ一つですべてが変わる若葉。そんな「若葉竜也の佇まい」をこの特集を通して追うことで、あなたも生きたことがない人生とそこで生じる味わったことがない感情を体験することができるかもしれない。
構成・文=戸塚安友奈
「特集 若葉竜也の佇まい」
放送日時 10/5 (土) ひる12:00より一挙放送
「アンメット ある脳外科医の日記」(2024年・TVドラマ)※BS・CS初
放送日:10月5日
原作:子鹿ゆずる(原作)/大槻閑人(漫画)『アンメット-ある脳外科医の日記-』(講談社「モーニング」連載)
脚本:篠﨑絵里子
演出:Yuki Saito、本橋圭太、日髙貴士
出演:杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花、山谷花純、尾崎匠海(INI)、中村里帆・安井順平、野呂佳代、千葉雄大・小市慢太郎、酒向芳、吉瀬美智子、井浦新
「街の上で」(2021年・映画)
放送日:10月5日、10月10日
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉、大橋裕之
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌(友情出演) ほか
「ペナルティループ」<PG-12> (2024年・映画)※TV初
放送日:10月5日、10月9日、10月18日
脚本・監督:荒木伸二
出演:若葉竜也、伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン