有村架純、坂口健太郎、黒崎博監督が考える“愛”とは?
鑑賞直後の観客も早速、「私は、心臓がよりドキドキと大きく動くときが愛だと思っています。先ほど監督からも、このドラマを通して一緒に愛を探す旅に出てほしいというお話もありましたが、皆さんにとって愛とは何でしょうか?」と質問。
黒崎監督は、「自分で出した問いに、自分で答えるのは難しいですね(笑)。自分がこの作品を撮りながら思っていたのは『愛とは恐れ』です。人を愛するということはとても幸せなことです。でも、本当に誰かを好きになってしまったときに、その愛が自分自身を、また相手や他の誰かを傷つけるのではないか、そういった、いろいろな形の愛がこのドラマにたくさん込められています。そのどれもが深くて強い。その心情をこの2人が繊細に感じながら演じてくれました」と熱く答える。
有村は「私が思う愛とは『涙』。その理由は、思うからこそ、友達でも家族でも恋人でも、うれし涙や悲しい涙を一緒に流したり、自分の心が1ミリでも2ミリでも動くものに対しては、全てに愛が生まれている証なのかなと思います。すてきな景色を見て、なぜか分からないけど涙が出たり、そういったものに出会った瞬間にさえ、愛が生まれるのかなと思います」と力強く、真っすぐに返答。
そして、坂口は「愛かぁ。僕は、愛とは?って問われたときに自己犠牲と答えていて。恋人同士でも家族でも友人でも、自分のことを犠牲にしてまでも相手のために何かしたくなった瞬間に、初めて愛になるんじゃないかなと思います。だからこそ、自分の中の愛の許容量を増やしておかなきゃいけないなと思いますね」と話した。
坂口健太郎「彼らの生きていた証を心に留めてもらえたらうれしい」
最後のあいさつでは、黒崎監督が「素晴らしい機会をありがとうございます。この作品をお見せするのは世界中で今日が初めてなので、とても楽しみに、緊張してやって来ました。今日、皆さんに温かく見守ってもらって、やっと羽ばたいていけるなという気持ちでいます。この映画祭には、たくさんの国からたくさんの作品が持ち込まれています。僕たちも、この作品の全8話の時間を使って、精一杯人間の愛について考え描きましたが、それでも1作品で人間のごく一部しか描けないからこそ、この映画祭全体で積み重なり作品が育っていくことで、だんだん人間というものが浮かび上がってくるのではないかなと、昨日から参加していて考えています。僕たちの作品も、たくさんの作品の中の大事な1つのピースになればと願っています」と熱い思いを口に。
有村は「この歴史ある映画祭でこの作品を残せたことを、すごくうれしく思います。大切な人が亡くなったときに、魂は生き続けていくと思うことで自分の悲しみを受け入れようとすると思うけど、やっぱりそんな美しいことばかりを思えるわけではないと思うんですよね。どうしたって、そこにいてほしい、触れたい、声が聞きたいと思うことはきっとたくさんあって。だからこそ、皆さんが思う大切な方たちを今一度、改めて思うことができたら、私としてとても幸せなことだなと思います。どうか後悔のないように、大切な人との時間を過ごしてほしいです。そして、この物語と同じように、悲しいことがあっても人生は続いていくので、その悲しみを乗り越えた先にきっとある希望をくれるような作品になっている、そういうメッセージが伝わればうれしいなと思います。ありがとうございました」と話す。
坂口は「やっぱり、愛情というものはすごく普遍的でもあり、国や人種やいろんなものを超越して、そこに存在しているものだと思います。人間は必ずしも正しい選択はできないし、そこでどうしても間違いを犯してしまうときもあるし、それでも僕たちは生きていくんですよね。悲しいことがあっても、僕らは一歩足を前に踏み出さないといけなくて。成瀬やさえ子は演じた役ではあるけれど、今見てもらった映像の中で彼らは確かに存在していて、呼吸していて、彼らのその生きざまやストーリーを皆さんの心の中に残してほしいと思います。あと、すごく個人的なんですけど、2回目見た方がグッときたんですよね。良いドラマだなと思っちゃって(笑)。そのときの自分の環境だったり、タイミングで見え方が少しずつ変わっていく作品だとも思うので、彼らの生きていた証を心に留めてもらえたらうれしいなと思います。今日はありがとうございました」と締めくくった。
ポニーキャニオン