これまでの見方がガラッと変わる第7話(以下、ネタバレが含まれます)
第7話を見終わって真っ先に思ったのは、これまでの6話分の見方がガラッと変わったという衝撃。小夢はずっと私たち人間(視聴者)側に立ってくれていたため、基本的にこれまでのストーリーは彼女目線で進んでいった。だが、そんな彼女こそが“全決”の室長であり、“神だった”ことが判明する。
特に第1話はもう一度見たくなる。冒頭で芹田が、小夢を“全決”までデリバリーするシーンは、当初は「何か不思議で変な人」という印象だったが、今見ると切ない。小夢(天宇受売命)と何度も伴侶として人生を共にし、長い歴史を繰り返してきた芹田(猿田毘古神)。だが、もうその記憶が彼女にはない。ヒルコに「事戸渡し」をされてしまったから。
では、なぜそんな神ではなくなってしまった小夢が再び“全決”に戻ることとなったのか。それは意外にも室長代理である興玉の熱い思いによるものだった。「僕は諦めませんよ。彼女は天宇受売命です。“全決”の室長であり、僕が最も信頼する仲間です。あの席に座るのは彼女しかいません。彼女を人間として“全決”の一員に迎え入れましょう」。
これまで興玉は、雅やかな雰囲気を醸し出しており、感情の起伏はそこまで感じられなかった。飄々としていて、腹の底が見えない。ゆえにこんなにもアツイ一面を持っていることにやや驚いた。それだけ小夢へ敬愛の念を抱き、心の繋がりも強く、信頼関係も深かったのだろう。
小夢が事戸を渡される前、興玉にこんなことを言っていた。「もう人間は神に近い力を手に入れたよね。って言うかもう、私たちの能力を超えちゃってるかもしれないね。人間の可能性はないかな?…ヒルコの正体は神ではなく人間だってことはない?」「確かに役小角だったら『事戸渡し』ができていたかもしれません」。
ヒルコ=神ではなく、ヒルコ=人間説が急浮上した第7話。そして急に現れた、ヒルコ事件でビッグデータ分析の調査協力を内閣官房から任されたテミスホールディングスCEO・寿正(野間口徹)。彼は月読命と接触し、「あなたの能力でこれ(人魚のミイラ)が甦ればすべての準備が整います」と口にする。その目的を月読命に聞かれた彼は、「修理固成、神の総入れ替えです」と答えていた。寿正=ヒルコとは考えにくいが、ヒルコ=人間説はさらに色濃くなった。なぜなら、人魚の肉を食べると不老不死になれるから。神だったら、そんなものを食べる必要はない。
さらに、その人魚は警視庁から盗まれたもの。警視庁捜査一課・巡査部長/ヒルコ専従班の北野天馬(小宮璃央)が「人魚のミイラが一体紛失しました」と上司に報告し、同じくヒルコ専従班の警視庁捜査一課・警部補の二宮のの子(成海璃子)は「内部の人間が盗んだとしか考えられません」と推測する。
面白くなってきた。寿正は、ヒルコ事件でビッグデータ分析の調査協力を内閣官房から任された人物。ビッグデータ分析といえば、霞が関の官僚・直毘吉道(柿澤勇人)が思い浮かぶ。ビッグデータを解析して、国民の関心が高く、多くの人が恐怖を感じている不可解な異常事件が発生した際、“全決”に解決を要請する直毘。ビッグデータ繋がりでもしや彼もヒルコ側なのでは?と思いつつも、直毘吉道=直毘神(罪や穢れ、禍い。つまり凶事・罪悪・災害などを改め吉の道に直す神)である希望も抱いてしまう(すでに「人間」と言われているため、やはり総入れ替え後の“新たな神”説も…)。
さらに北野天満宮を彷彿とさせる名前の北野天馬もヒルコ説が拭えない。少なくても警視庁の内部にヒルコ関係者は潜んでいる。北野天満宮に御祭神として祀られているのは、菅原道真公。神となった人間なのである。そうなると二宮のの子も二宮神社から来ているのではないかと妄想が膨らむ。二宮神社は昌泰の変により菅原道真を左遷した中心人物である藤原時平を含む六祭神を祀っているからだ。繋がっているのでは?とついつい思いたくなる。
いろんな伏線が散りばめられていることを改めて知らしめた第7話。我々視聴者の深読みはさらに広がっていく。さまざまな可能性を考え、想像を膨らませてくれる。今後どんな展開をしていくのか楽しみで仕方ない。
第7話の地上波放送を前に、FODでの先行配信を観た視聴者たちからSNS上で「第7話をみて今第1話から見直してる」「FOD入会してしまったよ…第7話最高でした…」「全決どんどん面白くなってく!!加速度すごい!」などの声が上がり、話題となっている。
構成・文=戸塚安友奈
エイベックス・ピクチャーズ