コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、FEEL YOUNGにて連載中のシバタヒカリさんが描く『カラフルアンチノミー』(投稿時タイトル『人の目ばかり気になる私がマチアプで意外な出会いを果たしたら』)をピックアップ。
2024年10月8日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、2,900件を超える「いいね」と共に、反響コメントが寄せられた。本記事では、シバタヒカリさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
「1回だけ」と始めたマッチングアプリで出会ったのは…
会社員の月岡文は、自分に自信がなく人に流されやすいタイプ。社会で活躍し、自立できている女性に憧れる一方で、頼れる人に甘やかされたいと考える、両極端な理想を持って過ごしている。
ある日、文は押しの強い後輩からの勧めでマッチングアプリに登録。「1回だけ」とアプリで適当に気になる男性を探し、見た目が好みの人にアクションをとってみるとすぐさまマッチング!相手のペースに流されるまま、あれよあれよと会う約束をしてしまう。
あまりにもスムーズな展開に怪しい勧誘やヤリモクなどの不安を感じつつも、期待の方が上回っている文。待ち合わせ場所のお店に入って待っていると、少し遅れてマッチング相手がやってきた。アプリのプロフ写真通りのイケメン登場に緊張する文だったが、何かがおかしい。マッチング相手のイケメンは、胸に膨らみがあり太ももを露わにしたショートパンツを履いている。
――マッチング相手は、イケメンな“女性”だったのだ…!
文の勘違いから始まった2人の出会いだが、イケメン女性・須良の誘いでそのまま食事をすることに。そして、見た目以上に中身もかっこよかった須良を前に、文は日頃抱えている“ダメな自分”に対する悩みを吐露し始める――。
情けない自分に思わず涙をこぼす文と、優しく寄り添い文を肯定してくれる須良。マッチングアプリのインスタントな出会いから始まった2人は、これからどのような関係を築いていくのか。そして、自分に自信がない文は今後、どのように変わっていくのか…。2人のやりとりに、読者からは「自分のことを大事にしたいと思える作品」「悩める自分を導いてくれそうな感じがする」などのコメントが寄せられた。
作者・シバタヒカリさん「少しでも貴方の楽しみや、元気の素、元気がない日に寄り添える存在になれたら」
――『カラフルアンチノミー』を創作したきっかけや理由などをお教えください。
まずは、本連載の企画が稼働する前に他誌で別の作品の連載の準備をしていたんですけど、その時に描いていた女の子が元気いっぱいの強い主人公だったんです。でも難行していて。修正案として「読者の皆さんに共感してもらえるような主人公の“ダメな所/出来ない所”を要素として入れましょう」というのを提案されました。その時はその提案を受け入れることがどうしてもできなくて、その連載の企画はおじゃんになってしまったのですが、この事をキッカケに「どうして読者の人達は主人公のダメな所に共感する(共感したいと思っている)んだろう」と考えるに至りました。
コミカライズを手がけた『だから私はメイクする』が発売された時に、ありがたくもソーシャルメディアを通して色々な感想を拝見することが出来ました。私は女性が自分の価値観を確立して楽しむ姿が、読者の方に元気を与えることができると思っていましたし、ほとんどの感想はそのように言ってくれていました。ですが、中にはそのキラキラした女性を見て自分と比較して、例えば「私はここまで自分に対してケア出来てないからダメ…と落ち込んでしまう」というような声があったのを思い出しました。私はそうコメントをした人達に「ダメじゃない!!!そんなことない!!!人には人の、貴方には貴方の正解があるはずだよ!!!」と、言いたかったんです。でも同時にすごく共感しました。いつまでも自分に合格点のようなものをあげられない部分は自分にもあるので。
その時に、「人から見たら十分素敵なのに自分に合格点をあげられない人」こそが今一番描いてみたい主人公だなと気がつきました。この主人公をどういう物語の中で展開させたいか構想を練っていく中で、色んな人の思想に触れて、共感や対立を経験する話が描きたいと思いました。その時に担当編集さんから面白い話をもらったんです。それが「マッチングアプリを使って友達を作るのはどうか」というお話でした。
こういう要素が噛み合って本作は生まれました。
――本作を描く上で、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
これは前作『だから私はメイクする』から変わっていないのですが、世の中にある思想のある一方を肯定する為に他方を否定するような、白黒つけようや!!って感じにならないようにしたいなと思っています。
――今回ご紹介させていただいている第1話~第2話の中で、シバタさんが特にお気に入りのシーンやセリフを理由と一緒にお教えください。
2話の「フミちゃんは自分に優しくするのが一番難しいんだね」って須良さんのセリフですかね。ここのセリフは担当編集さんが考えてくれました。自分が描きたいとずっと思っていた主人公像であるフミちゃんを表すキラーフレーズだと思いました。
――タイトル内の「アンチノミー」は二律背反という意味で、フミの中の相反する2つの理想像(“自立した女性になりたい”と“頼れる存在に甘やかされたい”)のことを指していると感じたのですが、『カラフルアンチノミー』のタイトルに込めた思いをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
マッチングアプリを通して色んな人に会う話なので、その十人十色な思想を簡潔に表せる言葉を探した時に「カラフル」とつけようと思いました。
「アンチノミー」についてはおっしゃる通り1人の人間の中にある矛盾、対立する気持ちを表せる言葉を探して付けたという感じです。2つ目の質問の回答と重複しますが、フミちゃんの心の中にあるこの2つの要素どちらかを否定することなく作品を作りたいと思う気持ちも込めました。
――X(旧Twitter)には、「自分のことを大事にしたいと思える作品」「元気をもらえる」など、作品を読んで前向きな気持ちになった人からのコメントが目立っていました。今回の反響をどのように感じていらっしゃいますか?
めちゃくちゃ嬉しいです〜〜〜!!!!!
そう思って欲しくて描いてますので!!!!
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
読者の皆様いつもありがとうございます。
この作品が少しでも貴方の楽しみや、元気の素、元気がない日に寄り添える存在になれたらいいなあと思っております。