市川実日子と芳根京子、俳優として輝く続けるその魅力を深堀り<TVer『俳優ドラマ特集』>
民放公式テレビ配信サービス・TVer(ティーバー)が「俳優ドラマ特集」を開催中。2025年冬ドラマに出演する俳優の過去出演作品30本が無料配信されている。その中から、今回は市川実日子と芳根京子の出演作品をピックアップ。それぞれの俳優としての魅力を紹介する。
市川実日子が「すいか」(2003)で見せるバイプレイヤーとしての片鱗
1月12日(日)よる10時30分より放送開始となる「ホットスポット」(日本テレビ系)。本作は、富士山の麓にある山梨県のとある町を舞台に、ビジネスホテルに勤めるシングルマザーの女性が、ある日、ひょんなことから宇宙人と出会うことから物語が展開していく“地元系エイリアン・ヒューマンコメディ”だ。
お笑い芸人のバカリズムが脚本を手がけ、「第115回 ザテレビジョンドラマアカデミー賞」で最優秀作品賞を受賞した「ブラッシュアップライフ」の制作チームが再集結した。それだけでもドラマファンとしては心躍るが、さらに嬉しいのは市川実日子がゴールデン・プライム帯のドラマで初主演を務めるということ。
市川といえば、「アンナチュラル」(TBS系)で石原さとみ演じる法医解剖医のミコトとタッグを組み、死因を究明する臨床検査技師の東海林を好演。映画「シン・ゴジラ」では、そのユニークなキャラで人気を集めた若手官僚の尾頭を演じ、「第40回日本アカデミー賞」で優秀助演女優賞を受賞するなど、日本のドラマや映画に欠かせない名バイプレイヤーだ。自然体の演技であらゆるジャンルの作品に溶け込みながらも、一本軸があり、独自の世界観を確立しているところが多くの人に支持されている所以ではないだろうか。
そんな市川の魅力を堪能できる5本の作品が無料配信されているが、中でも注目はTVer初登場となる「すいか」(日本テレビ系)。「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系)で知られる木皿泉が連ドラ初脚本にもかかわらず「第22回向田邦子賞」を受賞した秀作で今なおドラマファンからは熱い支持を受けており、放送から18年が経った2021年にBlu-ray BOXが発売された。市川は、主人公の基子(小林聡美)が越してくる下宿屋「ハピネス三茶」で大家を務める大学生のゆか役で出演。放送時25歳だった市川が演じるゆかは一挙一動がとにかくキュートだ。同時に出演者の中で一番年下とは思えないほど、どしんとした包容力があり、すでに頭角を現している。
芳根京子の全く違う顔を堪能できる「高嶺の花」「オールドルーキー」
1月14日(火)よる10時よりスタートとなるのは、「まどか26歳、研修医やってます!」(TBS系)。本作で、2015年放送の「表参道高校合唱部!」以来、約10年ぶりにTBSドラマの主演を主演を務めるのが芳根京子だ。働き方改革で変わりゆく令和の医療現場に戸惑いながらも、ベテラン医師たちの試練に立ち向かい、同期の仲間たちと励まし合って成長していく研修医を演じる。
昨年、俳優生活10周年を迎えた芳根は作品ごとに印象をガラッと変えて見せる実力派。その実力を世間に知らしめたのは2018年放送の「高嶺の花」(日本テレビ系)ではないだろうか。華道の名門「月島流」本家に生まれた美しき令嬢のもも(石原さとみ)と、迷い込んだ小さな商店街で自転車店を営む平凡な男性・直人(峯田和伸)による格差恋愛を描いた同作。芳根が演じたももの妹・ななは当初、世間知らずのお嬢様で、大人しい印象だったが、月島家を乗っ取ろうとする華道家の龍一(千葉雄大)に心を奪われたことで豹変。徐々に闇堕ちしていく様を体現した芳根の演技には鬼気迫るものがあり、観る人の視線を釘付けにした。
一方、「オールドルーキー」(TBS系)では、スポーツマネジメント会社で働く優秀な若手社員で、元プロサッカー選手からサラリーマンに転身した主人公・亮太郎(綾野剛)の教育係を務める塔子を好演している。快活で凛とした佇まいが印象的で、奈々を演じている時とは別人だ。だが、塔子にも人間的な弱さがないわけではなく、アスリートの経験がない中で悩みながら選手をサポートする彼女の姿を芳根は等身大の演技で持ってみせ、共感も応援もできるキャラクターに仕上げていた。ぜひ紹介した2作品で全く違う芳根の顔を堪能してほしい。
■文・構成=苫とり子