「ナースも医師も関係ない!目の前に患者が居れば救うだけ」
そんな中、すい臓がんステージ3の入院患者・めぐみ(若村麻由美)の病状が急変。彼女は1年半前までこの病院のナースで、当時外科医だった薬師丸がミスで患者を死なせた責任を肩代わりして病院を去ったが、薬師丸の執刀を希望して再び現れたのだった。高難易度の手術のため、失敗したら自分の汚点になる上に、このまま亡くなれば“過去の過ち”も葬り去られると考える薬師丸は、緩和ケアに切り替えようとしていた。
だが一刻を争う状況となり、歩は緊急手術を薬師丸に要請。しかし薬師丸は「今はそれどころではない」と拒否。「すでに手術適応外」「この状況で満足なオペができるわけがない」など言い訳を並べる薬師丸に、歩は、めぐみを「また」見捨てるのか、と強烈な一言をぶつけた。
歩は続けて、めぐみが今でも外科医としての薬師丸を信じている事、ひどい目に遭わされたのにまだ薬師丸を信じたいと思っている事を訴えた。黙って聞いているだけの薬師丸にイライラしたのか、歩は「治してほしいって患者が待ってるんだよ!!アンタ、医師だろ!!」と、彼を怒鳴りつけた。
この手術をしないと一生後悔する、と歩が言っても、もう自分は医師ではない、と動こうとしない薬師丸…。ブチギレて「もういいです。僕がやります!」と言った歩は、ナースには無理と言いかけた薬師丸の言葉を遮り、「ナースも医師も関係ない!目の前に患者が居れば、救うだけ」と強い口調で告げて部屋を出て行った。
静の広島弁、最終回でもさく裂!
一方、病室では、薬師丸にクビにされた吉子(安達祐実)たちナースが自主的に戻り、患者の看護に当たっていた。カルテがなくても適切な対応をする彼女たちを見た薬師丸は、静が常日頃から言っている「ナースは人を見て人を治す」という言葉の意味が少し分かった気がする、と言った。
それに対し、静は「私たちはカルテ以上に患者本人を見ている」と言い、患者だけでなく薬師丸の事も見ていると告げた。そして、薬師丸(の考え)を治す事が、この病院にとって一番の改革だと考えている事も告げた後、薬師丸の耳元に近づき、「いつまで突っ立っとるんじゃい!」と広島弁でドスをきかせた。
めぐみの手術は、若い外科医の小山(渡辺大知)が執刀。だが、3DのCT画像が表示できない現状ではこれ以上進められなくなってしまった…。その時、手術室に薬師丸が入ってきた。しかし、優秀な彼をもってしても手術は難航。彼はNPの歩に「手を貸してほしい」と頼み、2人で協力して、無事に手術を成功させた。
薬師丸は病床のめぐみの元を訪れ、彼女の手を両手で包みながら「申し訳ありませんでした」と、涙ながらに謝罪した。そして、廊下に居た歩と静に深々と一礼し、2人の姿が見えなくなるまで顔を上げる事はなかった。
そして、彼は記者会見を開き、一連の責任を取る形で院長職を辞任。灰原の件についても任意聴取に協力し、ミスで死なせた患者の遺族にも真実を話して謝罪する事にした。もう医療の世界に戻る事はないと決意した薬師丸の表情は、これまで見た事がないほど穏やかだった。
改革の目的を見失ってしまっていた薬師丸
薬師丸は、静と歩の“敵”ではあったが決して悪人ではなかった。「病院を、医療界をより良くしたい」という思いは本物で、私利私欲で病院の改革を目指したのではない。だが、いつのまにか「誰のために、何のために」より「改革」自体が目的となってしまった。「クリーンな改革」の方法がクリーンではなくなっていく事に気付く余裕を彼は失っていたのだ。
「全ては私の未熟な改革が原因だった」と薬師丸は言っていたが、原因は彼の“傲慢さ”にもあったように思う。自分の身代わりにしためぐみに感謝するどころか「ただのナースと医者の自分、どちらが価値があるかは明白」と平然と言い放った傲慢さ、現場の声に耳を傾けずワンマンに理想を押しつけた改革…。
そんな彼の危うさを静はいち早く見抜き、事あるごとに遠回しに彼に“気付き”のきっかけを与えていた。が、薬師丸には“ただの邪魔者”でしかなかった。もっと早く自分の過ちに気付いていれば、違った結果になっていたかもしれない。
薬師丸が去った西東京総合病院には、ナース紹介所の千晶(浅田美代子)の尽力で、塔子(寺島しのぶ)他、クビになったナースたちが復帰。歩と静はフィリピンの病院で勤務する事になった。国が変わっても「人を見て人を治す」事は変わらない。歩と静の活躍と痴話ゲンカのようなほほ笑ましいやり取りを、いつかまた見られることを願う。
◆文=ザテレビジョンドラマ部