普段と違う現場でも「僕という人間がバレ始めてきた」
──そして明治座『1789 -バスティーユの恋人たち-』の上演が近づいてきました。前回は歌げいこが始まったところで「今のところ楽しい」とおっしゃっていましたが、今はどうですか?
しんどかった時期を一度終えたところですね。というのも、最初に自分が考えたシャルル・アルトワを全力で提示したうえで、演出家の小池(修一郎)さんのイメージとすり合わせた結果、最初に持って行ったものからガラッと変えることになって。マインドもそうですけど、もっと具体的に、話し方や動きを大幅に変えることになりました。前回アルトワを演じていた吉野圭吾さんのイメージに近いものに。しばらくそれでやっていたら、小池さんから、もうちょっと僕っぽい軽率さを入れてみようという提案をされて。その、役作りが二転三転している期間はしんどかったですね。
本番までに、また変わる可能性もあるから何とも言えないですけど、今の僕らしさを入れた形になってからは、先輩たちにも「のびのびしているね」と言ってもらえるようになって、自分としてもやりやすくなっている感じがあります。歌も、ピッチがどうとかというよりも、役柄の雰囲気に合わせるというところの段階で。全体的に模索しているところではあります。
──やはり楽しいだけではなかったですね。
はい。でもカンパニーのみんながめっちゃ優しいので助かっています。カンパニーの中で僕と小南(光司)はどちらかというと歌が苦手ですが、歌で失敗したときには、先輩たちがいろいろ教えてくれます。そういうときにネタで、僕が小南に「あの人たちはみんな歌える人たち。俺たちの本当の気持ちなんかわかんないから信じるな。俺だけを信じろ」って言っています(笑)。
──そうやって支え合っていると。
はい、これはネタですけどね。あと、アンサンブルの方たちが本当にすごくて! 歌もすごいし、めちゃくちゃ踊っているし。度肝を抜かれるすごさです。だから、アンサンブルの皆さんがより支えたいと思える自分たちでいなきゃいけないなとは思いますね。「何で自分よりもできないやつが、自分よりいい役で出ているんだ」って思われないようにしないとなって。
──いろいろな人たちから刺激を受けて成長中なんですね。
そうですね。最初は普段と違う現場で緊張感もあったのですが、最近ようやく現場の僕色になってきて。……「僕色」っていうのは言い過ぎですけど(笑)。最初は(岡宮)来夢にも「健介くんのいいところが1ミリも出てないです」って言われていましたが、ちょっとずつムードを掌握してきたというか、僕という人間がバレ始めてきた感じがあって。
──さすがです。
会話をする人を増やしていくうちに徐々に、という感じですけど。特に、マリー・アントワネット役の凪七瑠海さん、ポリニャック夫人役の晴華みどりさんの宝塚歌劇団の出身のお二人にめっちゃ話しかけました。そしたら、晴華さんのことを「姉さん」って呼ぶところまで行きました。そういう関係になれたから「今日の俺のピッチどうですか?」と聞くと、思ったことをはっきり言ってもらえたりもするし。あとは、僕と小南と凪さんで歌うシーンがありますが、僕と小南はめっちゃミスります。そのたびに謝りますが、その流れで「宝塚ではこんなことありえないですよね。各々完璧に仕上げてくるイメージです」と言ったら、「いや、私たちもいっぱい練習していたんだよ」と教えてくださったり。あとは、ロワゼル役の宮下雄也さんがずっとふざけてくださるので、そこに乗っかったりしています。
──居やすい稽古場になっていっているんですね。
はい。それなのに、なぜかオランプ役の星風まどかさんと奥田いろはさんのことは、ずっと「さん」付けで呼んでいます(笑)。

久しぶりの再会で「お互いにリスペクトしている感じが大人」
──本番を終える頃に、その関係性に変化があるのかも注目ですね。では、最後に最近“オトナ”になったなと感じた出来事を教えてください。
この間、高校生のときに出ていた番組の共演者8人くらいでご飯に行きました。今は俳優やモデル、芸人など、それぞれの道に進んでいて。当時はある種ライバルでしたが、それぞれの近況を話していたら、全員が全員をほめていました。その状況に、大人になったなと思いました。それぞれの人生に対して否定したり「それ、どうなん?」とか言ったりしなくて、純粋に「すごいね」って言い合えて。「俺のほうがすごいよ」とかもなくて、お互いにリスペクトしている感じが大人だなと思いました。会話は基本的にバカなことばっかり言っていましたけどね。だからすごく楽しかったです。
──すてきですね。
あ! でも1つおかしいなと思うことがあって。その会には、年下もいましたが、同い年も4人くらいいました。なのに、お会計はなぜか僕が一番多く払っていました。おかしくないですか? まぁ、僕は実家住みだし、そのときは何も感じなかったけど、あとから考えたらおかしいよなって。
──オトナになったエピソードだったはずが……(笑)。
いや〜、なんか勢いでごまかされた気がするんだよな(笑)。まぁ楽しかったからいいですけど!


◆取材・文=小林千絵 スタイリング=石橋修一 ヘア&メーク=yuto 衣装協力=TOOCO、United Athle、luxfort、SunKu
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