そうして、気づけば、たまに降る南仏の雪を何度か見送りながら、三ヶ月の時間が過ぎていた。三ヶ月間、先生はわたしが素人であることを言い訳にせず、プロと同じ目線で厳しく指導してくれた。最初は怖かったが、少しずつ自分の料理が形になり、技術が磨かれていく感覚は何より嬉しく、プログラムはあっという間に終わった。
今は、料理を作るのが一番の趣味・特技となった。気づけば「料理が上手な人」と評判になり、ディナー会を開けば、たくさんの友人が料理を楽しみに集まってくれる。
もともと、シェフという職業にも憧れがあった。けれど、この経験を通して、厨房の上下関係や職人の世界の厳しさを知り、現実に触れたことで、プロのキッチンで働く夢には自然と区切りをつけた。その代わりに、自宅で情熱を持って腕を磨く道を選んだ。
それでも、料理学校で大人数での研修を受け、自分が苦手としていた集団行動にもあえて挑戦し、試行錯誤してみたのはよかったと思う。苦手な分野で成長したというよりは、自分に合う方向を見つけることも大切だと学んだ。
料理学校のクラスメイトの中でも特に印象に残っているのは、弁護士の兄を持ち、自分は料理人を目指していた青年。彼が言った言葉が、今でも心に残っている。
「食卓を囲むことで人々が集まり、心が通い合う瞬間を作れるから、料理をするのが好きなんだ」
わたしの手料理を楽しんでいる友達の笑顔を見ると、いつもこの言葉が頭に浮かぶ。大切に作った一皿が、楽しい時間を生み出し、人との距離をぐっと縮めてくれる。
こうした経験から、今はお店を開くことはできないけれど、もっと多くの人と料理でつながりたい――そんな思いから新たな目標ができた。昨年からSNSに料理の写真や動画を投稿し始めると、30万回以上再生されたショート動画もあり、予想以上の反響にとても嬉しかった。現在はキッチンをリノベーション中のため一時休止しているが、近いうちに、味は伝えきれなくても、自分の個性を活かし、見るだけでワクワクするような料理動画を作りたい。SNSも料理も好きだからこそ、時間や場所を超えて楽しめる「料理」を届けたいと思っている。
あのとき、ふと「フランスで料理を学びたいな」と思った自分は、まさかここまで人生の可能性が広がるなんて、きっと想像もしていなかっただろう。そして何より、あの一歩を踏み出すきっかけをくれた友人には、深く感謝している。
彼女は今もパリに暮らしていて、会う機会こそ少ないものの、よく現地の最新の食事情を教えてくれる。わたしにとって、本当に大切で貴重な友人だ。

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