「半沢直樹」「下町ロケット」…池井戸ヒット作に学ぶ「陸王」の見どころとは?【ザテレビジョン35周年特集】
日本のテレビ史を見つめてきたザテレビジョンは今年、創刊35周年。これまで、さまざまな大ヒットドラマを追いかけてきた。過去の記事からピックアップして“テレビ”を振り返る【ザテレビジョン35周年特集】で今回は、そんな大ヒットドラマの中から‘13年の大ヒット作「半沢直樹」(TBS系)をはじめとする池井戸潤氏原作の企業再生ストーリーに注目する。
“イヤな上司アラカルト”だった「半沢直樹」
ドラマ「半沢直樹」は、現在放送中の人気ドラマ「陸王」(TBS系)の原作者・池井戸氏の人気小説「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」が原作。正義感と野心にあふれるバンカー・半沢直樹(堺雅人)が銀行内外の“敵”を追いつめていく爽快な展開が話題を呼び、最終回は驚異の視聴率42.4%! 半沢の決めゼリフ「倍返しだ!」がその年の流行語大賞に選出されるなど、社会現象ともなった。
池井戸ドラマといえば、まず浮かぶのは憎たらしい悪役。「半沢直樹」でも、融資課課長代理・古里役の手塚とおる、大阪国税局・黒崎役の片岡愛之助らの怪演が光った。そして“ラスボス”は、上司である銀行の常務・大和田(香川照之)。ザテレビジョン8月30日号では、ドラマ後半、120億円もの損失を抱える老舗ホテルの立て直しに挑む半沢が、大和田に土下座させられるシーンを取材した。次々と立ちはだかる敵にさぞ苦しんだ…かと思いきや、演じる堺は「この作品はイヤな方や嫌な上司がたくさんいて…“イヤな上司アラカルト”みたいな感じが演じていて非常に楽しいです」と案外ノリノリ。土下座の屈辱も乗り越え、最終回では半沢が大和田に土下座をさせる“倍返し”を果たした。
ちなみに、「半沢直樹」はザテレビジョンがクールごとに選ぶ「ドラマアカデミー賞」で監督賞、最優秀主演男優賞(堺雅人)、助演男優賞(香川照之)を獲得した。11月29日号のザテレビジョンでは、堺が「『倍返しだ!』が流行語になっていると聞いて、僕も使ってみたいと思ったけれど、普段の会話ではどのタイミングで出せばいいか分からなくて。だから、プライベートでは今まで1回も『倍返しだ!』って言ったことないですね(笑)」と茶目っ気たっぷりにコメント。監督賞に輝いた福澤克雄氏は、「はじめは半沢以外の人にも『倍返し』と言わせるつもりだったんですが、堺さんの『倍返しだ!』というセリフを撮ってから、これは決まるし、他の人に言わせるのはやめた方がいいなと思い、やめました」と撮影秘話を明かしている。
スケールの大きさが出色!「下町ロケット」
同じく池井戸氏の人気作品を福澤氏ら「半沢直樹」の制作陣がドラマ化したのが‘15年の「下町ロケット」(TBS系)。下町の工場・佃製作所を率いる主人公・佃航平(阿部寛)の熱いセリフと、大企業の横やりにもめげず夢とプライドを賭けたものづくりに挑む姿が視聴者の感動を呼んだ。
「下町ロケット」は、そのスケールの大きさも話題になった。ザテレビジョン‘15年12月11日号で福澤氏は「第1話、帝国重工で財前(吉川晃司)がスピーチする場面では、本当に数百人のエキストラと衣裳も用意しました。周囲に『どれだけ金を使ってんだ』なんて言われましたけど、どうしても最初に帝国重工のスケールを出したかった。社員が数万人いる大企業、それに対して佃製作所はわずか200人という構図を画で表現したかったんです」と告白。そんな福澤氏は阿部やその部下・山崎役の安田顕ら出演者からも全幅の信頼を得ていたようで、記事では「監督のやりたいことが見えているから、気持ち的に楽だよな。福澤さんの言うことを信じ、そこに向かっていける」(阿部)、「福澤監督はとにかくアツい。サラリーマンが日曜の夜に見て月曜日、元気に会社に行けるものを、という狙いが明確」(安田)とのコメントも。「下町ロケット」はザテレビジョンドラマアカデミー賞で最優秀作品賞など5部門を受賞したほか、東京ドラマアウォード2016の主演男優賞とプロデュース賞、日本民間放送連盟賞優秀賞などにも輝いた。
日曜の夜にスカッとするドラマを!
「陸王」でも、エキストラを多数動員してのマラソンレースなどスケールの大きさは健在。銀行員役の馬場徹、敵対するスポーツ用品メーカーの営業本部長を演じるピエール瀧など、池井戸作品につきものの敵とのバトルも見ごたえ十分だ。日曜にスカッとして月曜の朝に弾みをつける、新たな名作が誕生する!