'17年夏クールにかけて、地上波で放送されたテレビドラマを対象に開催した「第94回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」。その特別賞に、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK総合ほか)でタイトルバックを手掛けた田中達也氏、森江康太氏が輝いた。
田中氏は小物を街や自然に“見立て”、時にダジャレを織り交ぜながら紹介したカレンダーで注目を集めるミニチュア写真家。一方、CGアニメーターの森江氏は、2015年にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「生命大躍進」シリーズで、リアルな恐竜のCGを手掛けていた。
そんな両氏のコラボレーションにより生まれた「ひよっこ」タイトルバックの、制作秘話やこだわりを聞いた。
ネットの反響は作品に影響も
──「第94回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」の特別賞に選出されました。今の気持ちをお聞かせください。
田中達也:うれしいですね! 賞をいただく機会があまりないので、認めていただけたのはありがたいです。頑張った甲斐がありました。
森江康太:僕も全く同じですね(笑)。ありがとうございます!
──「ひよっこ」のタイトルバックは、放送開始直後から話題になっていました。お二人も反響を実感されていましたか?
田中:そうですね。年配の方から手紙が届くようになって、ファン層が広がった感じがしましたね。
森江:ネットの声を聞いてから、映像に手を加えることもしていたんです。(冒頭のカットで)ローラーの色を疑問視する声が挙がって、修正したり。今の時代ならではだなと思いましたね。
田中:あれはもともと、「ひよっこ」の文字をペロンと貼り付けている設定なんです。でも、ペンキだと思っている方がいて、「ローラーに色が付いていないのはおかしい」と言われて。「めくれてるんだぞ」っていうことを、ちゃんと伝えようと思いました(笑)。
森江:それから、「赤ちゃんや子どもが反応する」っていうのも、よく聞きましたよね。うちの息子もオープニングが流れると必ず「パパが作った!」と言ってくれるので、うれしかったです(笑)。
田中:うちの子も、「“あいのことば”始まった!」と言って歌っていました。あまりにも一生懸命歌うので、森江さんに動画で送りましたよね?(笑)
高度な技術を、さり気なく
──朝ドラのオープニングで流れるということで、プレッシャーもありましたか?
森江:作っているときには多少ありましたが、オンエアされてからは無かったですね。手前みそですが、何度見ても飽きない映像だなと思っていました。
田中:僕らは完成するまでに何百回も見ているわけなので、「最初にこれを見た時に、どういう衝撃を受けるんだろう」というのは、ずっと気になっていました。それは他の作品でも言えることですけどね。
──あらためて、本作のコンセプトや、こだわっていたところを教えていただけますか?
田中:当時の物を使って、昭和の街並を再現しているところがポイントですね。「懐かしい」とか「これウチにあった」という声もいただきました。
森江:作品自体はレトロでアナログな雰囲気が漂っていますが、映像的に言うとかなり高度なことをやっているんです。CGを使っていると気付かず、ミニチュアだけの世界の映像だと思って見ていた方も多いんじゃないでしょうか? マッチ箱の街並は実際に箱を並べて作っていて、でも、その間を走る車はCGだったり。
田中:なので、「人間や車は、どうやって動かしているんですか?」って聞かれたのは、うれしかったですよね。難しい技術を、自然に見せられているっていうことですから。
──ミニチュアの中には、「うず潮」(1964〜65年)や「おはなはん」(1966〜67年)など、往年の朝ドラのタイトルも紛れ込んでいました。オマージュの意味合いがあったのですか?
田中:いや…(笑)。ディレクターさんたちが案を出して、それに乗っかりました。
森江:「ひよっこ」で描いている時代に放送されていた朝ドラをその場で調べて。ちなみに、「うず潮」を描いたのは僕なんです(笑)。
田中:皆さんがアドリブでやった部分も多いので、撮影現場にいた人たちの思い入れも深いと思います。
森江:みんなでスタジオに缶詰めになって、ロケ(撮影)をしている3日間は、すごく楽しかったですね。