
芥川龍之介賞など、数々の文学賞を受賞した作家・村田沙耶香原作の映画「消滅世界」が、俳優・蒔田彩珠主演で11月28日より、全国公開中。このほど、主人公・雨音の夫となる朔(さく)を演じた俳優・柳俊太郎にインタビューを行い、作品の見どころなどを聞いた。
ディストピアか、ユートピアか…近未来を描くSFヒューマンドラマ
本作は、ミュージックビデオやドキュメンタリー映像などを制作し、長く映像の現場で経験を積んだ映像ディレクター、川村誠が監督を務めるSFヒューマンドラマ作品。
人工授精が常識となり、夫婦間の性行為がタブーとされる世界で、男女の営みによって生まれた女性が恋愛や家族のあり方に翻弄されるというストーリーが展開される。柳は夫婦でありながら家庭に性愛を持ち込まない「清潔な結婚生活」を望む夫という役どころ。現代社会の常識とは異なる世界観の中で、妻との絶妙な距離感を表現した柳に作品について語ってもらった。

特殊な世界観「共感はできないけど、理解はできる」
――本作の舞台となる「性愛がタブー視された世界」という設定について、初めて脚本を読んだ時の率直な感想、最も印象に残った点についてお聞かせください。
5年くらい前に、監督からこの話を実写化したいというオファーを直筆の手紙で直接いただきました。最初は近未来のような、都市伝説を聞くような感覚でワクワクして読みました。
ただ、自分の生活にこの世界観、価値観が入り込んだら…と想像してみると怖くもなりました。
――“怖く”というと。
何でもシステム化していくと、生きていく上で誰かに作られているような感覚になるんですよね。
例えばお金がキャッシュレスになったことひとつとっても、生活が便利になる反面、小銭を持つ感覚とか、お金を払った時の喜びみたいな感情を感じにくくなっていく。そうやって物理的にも、感情的にも合理的なことを目的としてシステム化していくと、だんだん自分のことを自分の感覚として捉えられなくなっていくような感じです。
最近は、トラブルを生まないために、他人から良く思われるための振る舞いを選択し、自分自身を制御する…といった社会になってきている気もしていて、このままだと、常にどこかで、誰かに監視されているような、エデンみたいな社会になっていくんじゃないかと…。読みながら、そんな可能性に気付いて怖さも感じました。
――朔を通じて見た作品の世界観をどのように感じ、演じましたか?
共感はできないけど、エデンに対して前向きな朔のことを否定はできないなと感じました。エデンを信じる気持ちだけは理解できるというか。
僕が信じていないものを友人が信じていたとして、その状況を友人が幸せだと言い切るならやっぱり否定はできないじゃないですか。この世界観の是非は、すぐに答えが出るものでもないので、僕自身としては世界観に疑問を持たないように意識しました。
答えは原作と監督の中にしかないものだと思って、書かれていることをしっかり読んで演じる、今の時代の自分の感覚を持ち込まずにプレーンに演じる感覚をお芝居をする上では、大事にしました。



























