“俳優・津田篤宏”の奮闘を制作陣が絶賛
そんな俳優陣の中で、ジョン監督にとって津田篤宏(ダイアン)との再タッグは大きな心強さになった。
「フェイクマミー」の撮影に入る前、ジョン監督は「求人ボックス」のCMで津田と一度共演済み。今回のドラマ出演にあたり、「“ゴイゴイスー”は禁止でお願いしますね(笑)」と軽く釘を刺したことを明かす。
「CMの時から演技が本当にお上手だと思っていたので、不安はありませんでした。ただ、ご本人から『せりふが全然覚えられないから、カットを割ってくれ』と言われていたんですが、いざ通しで撮ってみたら全部覚えてきてくれていて。あれはすごかったですね」。
CMでの経験が“距離感の近さ”に直結したわけではないが、「どこまでできる方なのか」をつかめていたことで、迷いは一切なかったという。「津田さんは本当に優しい方。今回も安心して任せられました」と、信頼を込めて語った。

常に議論しながらシーンを作り込んでいった“本橋家”
撮影現場の空気をさらににぎやかにしているのが、“本橋家”の面々だ。ジョン監督は「本橋家、すごいことになっています。とても楽しいです」と笑いながら語る。
本橋慎吾役の笠松将は、いろいろなパターンの演技を提案してくれるという。「キャラクターについて、どう見えるべきか、見せるべきかを常に議論しながら、慎吾のシーンを作っていきました」と明かす。段取りの時にジョン監督の予想を超える慎吾の姿を見せた笠松。「先に見られることが何よりも楽しかったし、その計算がとても素晴らしかった」と、撮影現場で刺激を受けた。
本橋さゆり役の田中みな実に関しても、田中がクランクインしたシーンで、キャラクターがすでに出来上がっていたという。「細部まで設定を肉付けしていたので、本当にすごいなと思いました。田中さんの演技の幅は、もっとあるんだろうなと感じました」。
さらに、「段取りの後に、話し合いながら出てきた言葉に柔軟に対応してもらえたり、シーン内での議論も積極的にしてくれる。その姿勢がとても心強かった」と笑顔を見せる。
俳優が自由に役を広げ、監督がそれを正面から受け止めて返す。そのキャッチボールが、撮影現場に“親しさと熱”を生み出していた。

作品の奥行きを形作った“芝居優先”の姿勢
「フェイクマミー」現場の強みは、徹底された“芝居優先”の姿勢だ。ジョン監督は「俳優が考えてきたものを生かしたい」と語り、まずは俳優の動きをじっと見つめ、その呼吸を受け取りながら演出を組み立てていく。
撮影監督の片村氏も「芝居を長く見せたい」と語り、カメラを極力動かさず“演技を丸ごと味わえる”画作りを重視。照明技師の太田氏は「演出にかけられる時間をどれだけ伸ばせるか」を常に考え、俳優が集中しやすい環境作りに徹している。
3人のシンクロは驚くほどだ。片村が「ワイドで撮りたい」と心の中で思った瞬間、ジョン監督のトランシーバーから同じ指示が飛んでくる──そんなことが日常茶飯事。撮影後の帰り道では太田氏とジョン監督が “ミニ振り返り会”を開くなど、作品について語り合う時間は尽きない。
専門も立場も違う3人が、同じ方向――“俳優の魅力が最も際立つ画”――に向けて動き続ける。その静かで強い熱量こそが、「フェイクマミー」という作品の奥行きを形作っている。




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