向井康二は「せりふのない時の眼差しがとにかく美しい」
――日高いろは役の池村さんの印象や、特に印象的だったシーンはありますか?
嶋田:こちらの意図を凌駕する“自然な子どもらしさ”をナチュラルに演じる姿には驚きました。こちらも負けじと、いかに“本物の親子”に見せるか、リアルママ(パパ)の実体験や“あるある”を盛り込んでいきました。
宮崎:天才的な頭脳を持つ難しい役どころでしたが、「いろはを演じられるのはあおちゃんしかいない」と現場で何度も感じましたね。
嶋田:第3話で茉海恵が寝落ちしているいろはを運ぶ場面、最初は赤子を抱くように“横抱っこ”を想定していましたが、あおちゃんが意外に大きくて…、川栄さんが“縦抱っこ“してみると逆に赤ちゃんっぽくなり、自然な親子の空気が醸し出されました。
第4話でいろはが学校の友だちとジュースを作るシーンで、台本には何も書いてなかったのに、娘の成長を見た茉海恵が涙を流していて驚きました。あれはどういう経緯だったんですか?
宮崎:本来はいろはがジュースを作る姿と屋上にいる薫のカットバック(異なる場所で同時に起きている出来事を交互につなぐこと)の予定でしたが、川栄さんと相談して“いろはを見守る芝居”を足したんです。そうしたら楽しそうないろはを見つめて自然と涙を流してくださって。胸が熱くなりました。

――黒木竜馬役の向井康二(Snow Man)さんは?
嶋田:とにかくお芝居に貪欲ですね。毎カット、モニターに出る映像をスマートフォンで撮影して、後で見返していると聞きました。海外の作品も経験されているからこそ、役作りに対する執念というか、経験値と真剣さがそのまま姿勢に表れていました。
中西:現場ではいつも明るく、しんどそうな素振りは全く見せないのですが、マネージャーさんたちに聞いてみると裏では本当にたくさん練習してくださっているようでした。全力で竜馬というキャラクターに向き合ってくれてうれしかったです。
竜馬はこれまで向井さんが演じてきた役柄とは少し異なっていて、悩まれることもあったと思いますが、今はもう向井さんが演じる竜馬が竜馬だなという安心感があります。
嶋田:“表情の管理”も見事で、セリフのない時の眼差しがとにかく美しいんです。人物の心の揺れや成長を、ナチュラルににじませてくださっています。第8話の薫の母・聖子(筒井真理子)の手紙のシーンでは、1テイク目から涙を流していて。
撮影の順番的に3回目に向井さんのお芝居を撮影したのですが、3回ともボロ泣きで。本番中は“演じている”というより、本当に“竜馬として生きている”んだなと感じました。向井さんもそんなことをおしゃっていました。
中西:特に第5話、第6話あたりは、“向井さんの一番いい瞬間”が詰まっていると思います。あと、声の出し方も、普段とは違って、頼もしい感じの声で挑んでくださっていますよね。
宮崎:向井さんが撮影現場にいるだけで、その場の空気がより明るくなるんですよ。向井さん自身が、底抜けにいい人なんです。だからキャストもスタッフも自然と引き込まれる。

「笠松さんと議論するのが実は一番楽しかったかも」
――佐々木智也役の中村蒼さんは?
中西:本人は似てないとおっしゃっていますが、我々は結構ササエルと似ていると思っています。
宮崎:第4話の屋上シーンの名探偵的な動きもご本人のアドリブ。実は撮影はクランクインしたばかりの頃だったんですが、すごく面白いササエルを作り上げてくださいました。
嶋田:ササエルがまさかトレンド入りするなんて思っていなかったですね。
中西:友人からも“ササエルが好き”と言われました。
宮崎:あの面白さは中村さんの力だなと感じます。
嶋田:子どもへの対応力や包容力がすごいです。
中西:第7話で児童たちが一斉に「柳和サマーキャンプです!」と言ったあとの優しい「そうですね」というセリフも印象深いです。

――その他、印象的なエピソードはありますか?
嶋田:第7話の笠松さんの“写真ばらまき”はどう決まったんですか?
宮崎:ト書きに“ばらまく”と書いてあったので多めに渡したら、ドライで中村さんといろいろな芝居を試しながらあの量をばらまいてくれました。
嶋田:鳥肌が立ちました。
宮崎:おおまかなイメージを話してお任せしたら、ご自身でどんどん膨らませてくれるタイプ。
嶋田:第8話で、写真を取るのに、指の腹の皮脂で粘着させるというのも本人のアイデアでした。「ハエたたきみたいに取るのはどうか」と提案したら、「慎吾の茉海恵に対する今の感情だとこういうパターンはどうか」とアイデアをもらいました。
回想シーンで梁に頭を強打するのもご本人のアイデア。本当に痛そうでしたけど慎吾の人間味が出ていて素晴らしかったです。毎回笠松さんと議論するのが実は一番楽しかったかもしれません。
中西:いつも飄々(ひょうひょう)と現場に現れて、想像以上の面白さをお芝居で提案してくださるので、いい意味で毎回悔しかったです! 慎吾が登場するシーンが全部面白くて。
嶋田:第9話の社長室で茉海恵と対峙する場面も、台本ではシンプルに冷酷無比な悪者として描かれていたのを、現場で深掘りして“茉海恵とよりを戻せると思って来たのに全く違う雰囲気だったので、全てを奪う方向へ切り替わる”という表現をすることで、奥深く見ていてクセになる本橋慎吾の人物像を浮かび上がらせていました。




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