【テレビの開拓者たち / 倉本美津留】テレビバラエティー冬の時代に送る熱いエール
感覚の鋭い若い子たちに「何コレ?」と思うようなものを作ってほしい
――「ダウンタウンDX」は、20年以上続いている長寿番組ですが、その人気の秘密は?
「『DX』では、ゲストがエピソードを話す前に、まず浜田(雅功)氏が先に要点を言ってしまいます。それがゲスト本人の話でさらにふくらむのも面白いんですが、もしゲストのトークがグダグダでも番組は成立するんです。つまり、しゃべりが苦手なゲストも安心できるし、浜田氏が先にあらすじを説明しているから視聴者も内容を理解できる。これって、実はすごい発明で。要するに、ゲストにも視聴者にも優しいつくりなんですよ、誰もそこのところに気付いてないと思うけど(笑)。
さらに、そこに松本(人志)氏の確実に面白い一言が入って行きますから。彼は、どんな球が飛んできても必ず打ち返す。絶対に外さない。トークの笑いの打率10割なんです。いつも当たり前にそれをこなしているから、そのスゴさはスゴすぎて世間に伝わってないかもしれないけど、松本氏はまさに、フリートークの“名人”ですね」
――ちなみに、「ダウンタウンDX」のような長寿番組がある一方で、今は、バラエティー番組が作りにくい時代と言われていますが…。
「みんなが『やりにくい』『できない』と思いすぎている気がするんですよ。番組の中で何かアカンことをやってしまうときも、分かりやすく、誰が見てもアカンと思われるようなことをするから、文句を言われるんだと思うんです(笑)。だから、『何か分からへんけど笑うてまうな』みたいな、『何コレ?』っていうレベルまで行ってしまえばいいんじゃないかと。そこまでぶっ飛べば、もはやアートだと思うんですよ。これはいつも言ってることなんですけど、やっぱり、アートと笑いが一体になっているというのが重要で。そうなってしまえば、文句のつけようがないでしょ。『あんなもの面白くない』という文句のつけ方はあるかもしれないけど、それはもう、個人の感性の問題だから。まぁ、面白くないという評価が視聴率にどう影響するのかは分からないけど、少なくとも、今テレビから離れてしまっている、感覚の鋭い若い子たちが、『ワケ分からんけど、何か目が離せへん』って思うようなものを作ったらいいんだと思うんですよね」
――そんな倉本さんが、今後作ってみたい番組は?
「今、コントバラエティーが作りたいんです。コントはお金が掛かると言われてるけど、セットを作らなくてもロケに出ればいいわけだし、スマホでも何でも、いくらでも高画質の映像が撮れる。力のある若い芸人もどんどん出てきているので、低予算でも若者に突き刺さるコント番組は絶対に作れると思ってます。実際、そういう企画に乗ってきてくれる、気概のある局のディレクターもいると思うんですよ。ただ、そういう新しい笑いのかたちが世に浸透するのは時間が掛かるので、半年間…いや3カ月でいいから、時間の猶予を与えてくれる、懐の深いプロデューサーに巡り会えたらいいなと(笑)」