独断と偏見のレビュー
この春の大本命、決まったかも。
当然、2016年の年末に放送された単発ドラマも見ていたので、何となく内容や破壊力は理解していたのだけれども…。不覚にも声を出して笑ってしまった。何だろう、なんか悔しいぞ。
何なら笑い声がデカくて隣のおっさん(仮)に敵対的壁ドンをされてしまうくらい。いや、これ悔しいぞ。
序盤のカッコイイ入り方からしてズルい。落差をつけるため、あえて格好いいオフィスワークドラマっぽく見せるやつ。この入り方をすることによって、後の“デレ”の部分を際立たせる。
そもそも、常識的にキャスティングをしたら民放連ドラのラスボス、大河ドラマの戦国武将、はたまたシェークスピア作品の国王、百歩譲って和菓子屋の寅さん的な人になるであろう威圧感を放つのが吉田鋼太郎という俳優だ。
おちゃめな人柄も魅力の方だが、この黒澤武蔵というキャラクターはズルイ。作品の中で見事なまでのギャップ萌えを見せている。
バスの中で待ち受け画面を見られた後の「じゃあ、今日もよろしく」(キリッ)。この描写が実にうまく、後々の“カミングアウト”に効いてくる。うん、その後はどんなに普通の顔をしても笑ってしまうよね。
どのシーンも笑えるが、個人的には深夜のオフィスシーンがお気に入り。一歩間違えばホラーだろ。
そんな黒澤が愛してやまない“はるたん”こと春田役の田中圭。単発の時や某“月9”の時も思ったし、年齢的に言えば失礼に当たるのかもしれないが、彼の“永遠の少年”感はこういうキャラクターでこそ、最大限に生かされるってもんよ。
無邪気で老若男女問わず慕われる春田。何なら当て書きしたんじゃないの?ってほどハマっていたし、後輩に対する「やってみー」は、無類の女性好きでもちょっぴりグッとくる。
パッと見、しっかりした青年っぽいのに空回り気味だし、子供っぽいし、イケメンだけどいじりたくなる顔だし、“ドS”心をくすぐるはるたん。これもズルい。
ただ、筆者含めおっさん諸君は気を付けないといけない。これは春田だから許されるのであって、普通のおっさんが彼の立ち居振る舞いをまねしたら、確実に人事が動き出し、すぐさま「オー人事」に電話されるだろう。
そして連ドラからのキャスト・林遣都も絶妙なラインを攻めてくる。田中&吉田に関しては、単発ドラマでも熱い共演を果たした仲だけに、そこに入り込むのは大変だろうと思ったが、先日の試写会イベントでは「もう付き合ってるんじゃないかなって思うくらいの距離感(笑)」と共演の内田理央に密告されるほどのラブラブぶりを見せているとか。
画面を通してもそれが分かるほど、2人の距離は近く見えた。そりゃ吉田も嫉妬するわ。
その他、吉田が“某和菓子職人”時代も元妻役で共演した大塚寧々とのやりとりに、注目の若手・金子大地のイマドキな若者っぷり、男女の友情はあるんです!感が漂う内田、そろそろ朔ちゃんが恋しいわたるん…いやいや、デキそうな主任・武川政宗役の眞島秀和の謎めいた雰囲気。
ちず役の内田はテレ朝ドラマだとキリっとしたコを演じる印象も強いが、ちずの兄を演じるのが児嶋一哉って遺伝子がロック過ぎるでしょ。常識ではこのきょうだいも考えにくいな。
おっと、そんな常識的フィルターでこの作品を見てはいけないんだった。
2017年秋にセンセーショナルな内容で話題をさらった「オトナ高校」の制作チームが、再び自信を持って届ける本作。
とにかく、「愛って何だろう」と思い悩んでいる人にはマストで見てほしいし、愛だの恋だのには無頓着な人でも楽しめるはずだ。
「神様。僕が希望していた運命の恋とは、少しテイストが違うような気がします」って春田の心の声にあるが、私も運命とかわがままとか言わない、この際少しテイストが違ってもいい。
誰かこのおっさんとラブしてくれる人はいませんかね?
とりあえず、バス通勤から始めてみよう。
文=人見知りシャイボーイ