ハゲタカVSハイエナ!? 綾野剛の敵役に高嶋政伸「久しぶりに感情がむき出しになった役」
ファインTD社長・滝本誠一郎役 高嶋政伸 コメント
上辺だけではない、内に秘めたパワーを役者人生を賭けて演じないと滝本という人間は出来ないのではないかという気がしたので、とにかく練習を積み重ねました。
眠りながらでもせりふが言えるようになるくらいに染み付いてから初めて滝本のキャラクターを作れると思ったんです。
滝本は気迫に満ちあふれている男。鷲津が死肉を食らうハゲタカなら、滝本は「あけぼの」という企業を生きたまま食らうハイエナかな、と思ったのが役の構築のきっかけでした。
しかし5話くらいになると、それが少しずつ変わってきたんです。
ゲーテの「ファウスト」という作品をモチーフにした舞台を演出したことがあるのですが、そのときに劇場を真っ暗にして、悪魔のメフィストがファウストに「世界のすべてを見せてやる」と語りかけ、地獄へと案内する場面がありました。
真っ暗闇の中で手元にある小さな灯りだけで地獄へと導くメフィストも、足元がよく見えず、実は怖い思いを抱いていたのではないかと、その時に感じました。それは、滝本も同じではないかと感じたんです。
「欲望に身を任せろ」と『あけぼの』の会長に囁きながらも、一方で滝本自身も根底では怖れを抱いているのではないか。マネーゲームに取りつかれ、野望に踊らされてしまっている人物なのではないか――そんな風に感じたんですよね。
最初はギラギラとしたハイエナのような男だと思った滝本でしたが、徐々に人間らしさや孤独な部分も見えてきて、とても面白い役だと感じました。
彼本人も分からなくなっている素の自分を、鷲津からの攻撃によって認識し始めるのですが、そこを認めることができなくて葛藤する、後半ではそんな苦悩も見えてきました。
綾野さんと共演させていただくのは今回が二度目なのですが、前回はご一緒するシーンがあまりなく…。今回はガッツリご一緒できたので、綾野さんの気迫をあらためて感じることができました。
綾野さんは本当にパワフルな方で、そんな綾野さんと対等にお芝居をするには、こちらも相当な役作りをしなくてはいけないと思い、ひたすら練習を重ねました。
反復練習の中から出てくるものを今回はとても大事にしました。性根を据えてやらないと吹き飛ばされてしまうと思うほど、久しぶりにすごい役者さんにお会いした気がします。
俳優とは“人に非ず”と書くくらいで、どこか壊れている部分があると思うのですが、綾野さんはそういった部分を大切にされていて、なおかつ、私からもそういう部分を引っ張り出してくれる方でした。
滝本は、ダイナミックだけど緻密に相手を崩していくところに喜びを感じている人物。ややサディスティックな面を持ち合わせた怪人が、またひとり誕生したような気が(笑)。
そんな男が鷲津の前に立ちはだかります。自分の中にある表情を総動員し、久しぶりに感情がむき出しになった役でした! 2人のガチンコ対決と併せ、そのあたりも楽しんでいただけたらうれしいです。