「カルテット」の“唐揚げにレモン”問題にも賛同!? 人気フードスタイリスト・飯島奈美の仕事論
料理本や雑誌、広告のほか、映画やドラマなどの映像作品に登場する料理の監修を手掛けるフードスタイリストの飯島奈美さん。映画「かもめ食堂」(2005年)や「海街diary」(2015年)、ドラマ「ごちそうさん」(2013~2014年NHK総合ほか)、「カルテット」(2017年TBS系)など、数多くの作品の料理監修を務め、庶民的でありながら上品な彼女の料理は、業界内でも高く評価されており、熱烈なファンも数多い。この夏、そんな飯島さんが料理を担当する番組「365日の献立日記」(NHK Eテレ)が登場。 出演のオファーを受けた飯島さんが「本能的に“やりたい”と思った」というこの料理番組の見どころを本人にお聞きするとともに、これまでにフードスタイリストとして参加してきたテレビドラマの制作裏話や、フードスタイリストという仕事へのこだわりや矜持を語っていただいた。
ぬるめのお風呂に浸かる感じで、ぼーっと眺めてもらえたら(笑)
──今回、飯島さんが料理を担当される「365日の献立日記」は、昭和の名脇役として活躍し、1996年に87歳で逝去された女優・沢村貞子さんが、86歳のときまで26年半もの間、1日も欠かさず大学ノートに綴っていた“献立日記”に書かれている料理を読み解き、実際に作ろうというユニークな番組ですね。
「お話をいただいたときは、すごくうれしかったです。いろんな仕事の依頼をいただく中で、ときどき、本能的に『やりたい』と思う仕事がいくつかあるんですけど、この『365日の献立日記』は、まさにそうで。ただ、沢村貞子さんの献立日記は、昔から憧れていた本でしたから(※「わたしの献立日記」として中公文庫ほかより発売中)、本当に私がやっていいんだろうかという緊張感もあります」
──沢村さんの考える献立は、プロの目から見て、どのように評価されますか?
「沢村さんが書かれた本物の献立日記も見せていただいて、感激だったんですけど、大学ノートに書かれているんですよ。今回の番組で作る『夏ずし』とか『真夏の天ぷら』とか、季節によってちゃんと食材を変えていて、また、今回は作らなかったんですが『セロリの味噌汁』みたいな斬新なメニューもたくさんあって、とても柔軟な発想をされる方だったんだなと改めて思いました。毎日料理を作り続けている方ならではの発想なんだと思いますね。
あと、私は梅酢が大好きなんですけど、沢村さんも、お寿司なんかによく梅酢を使われていて。それに、ぬか漬けにこだわってらっしゃったというのも、私と似ているところがあるのかなと思えて、うれしかったですね。きっと、おいしいものが好きで、それを誰かに食べてもらうことも大好きな方だったんだろうなと思います」
──番組で紹介するのは「夏ずし」「真夏の天ぷら」「ウナギとぬか床」「ポタージュとマリネ」の4品だそうですが、このラインナップは飯島さんのセレクトなんでしょうか?
「今回はスタッフの方たちが決めてくれました。洋食とか、ちょっと和に近いものとか、簡単そうなもの、手の込んだものなど、なるべくバリエーションが出るように選んでくださいました。また、料理を盛る食器は、私が選ばせていただきました。日常使いができて、気持ちが落ち着くような、かつ、沢村さんの時代を思わせる、趣きのある器を使っています」
──沢村貞子さんの考えた献立を作る上で、大変だったこと、工夫されたことは?
「もともと私は骨董市に行ったり、古い本を読んだりするのが好きで、沢村さんの書かれたエッセイだけでなく、沢村さんが愛読されていたという料理本も持っていたので、そういったものも参考にしたり。また、沢村さんの献立日記は、基本的に献立と主な食材だけで、詳しい作り方は書かれていないので、番組では、あまり具材をたくさん入れないようにしたりして、視聴者の方々に『こんなの作れない』と思われないようなものを、ということは意識しましたね。
ですから、沢村さんのアイデアを尊重した上で、かなり自由に作らせていただいた、という感じです。『私もこんなの作ってみようかな』って、ちょっとした日々の原動力にしていただければうれしいですね。一日の疲れを取るような、ぬるめのお風呂に浸かるような感じで、ぼーっと眺めてもらえたらと思います(笑)」