「カルテット」の“唐揚げにレモン”問題にも賛同!? 人気フードスタイリスト・飯島奈美の仕事論
「ごちそうさん」では“味噌汁の湯気”にこだわりました(笑)
──では、飯島さんのこれまでのお仕事についてお聞かせください。まず、飯島さんがフードスタイリストになろうと思われたきっかけは?
「栄養士の学校に通っているときに料理雑誌を見ていて、フードスタイリストやフードコーディネーターという仕事があることを知って、それ以来、『こういう仕事があるんだ…私もやってみたい!』という思いはずっとあったんですね。でも、その後の就職活動で、フードスタイリストだけにこだわるわけにもいかなくて。そんな中で、料理雑誌の編集者を募集している編集プロダクションに面接に行ったら、面接してくださった方が、『雑誌の編集よりも、料理を作る仕事がしたいんでしょ? だったら、フードスタイリストの人を紹介してあげるよ』と言ってくださって…今思うと、すごくラッキーだったんですけど、そのときに紹介していただいた先生のもとで、アシスタントとして勉強させていただけることになったんです」
――その後、独立されて、テレビCMなどを中心にお仕事をされるようになって。映像作品に携わるようになったのは、映画「かもめ食堂」にフードコーディネーターとして参加されたのがきっかけだったそうですね。
「当時、(「かもめ食堂」主演の)小林聡美さんがイメージキャラクターをされていたパンのCMのフードコーディネートを担当していたんですが、ある日、小林さんの事務所の方から『一緒に映画をやりませんか?』とおっしゃっていただいて。そのCMでは、パンを焼いたり、目玉焼きを焼いたりといったことぐらいしかしていなかったので、事務所の方が、なぜ私に声を掛けてくださったのか、すごくびっくりしたんですけどね。私が(映画に出てくる)味噌汁とか焼き魚を作れるかどうか、よく疑わなかったなって(笑)。でも、そのことを後で聞いたら、『雰囲気がよかったから』というようなことを言ってくださって。私は生来のんびりした性格なので、それが『かもめ食堂』という作品の世界観に合っていたのかもしれません」
──その後、連続テレビ小説「ごちそうさん」のフードスタイリストを担当されたときに、飯島奈美さんのファンがより一層増えた、という印象があります。
「『ごちそうさん』も、思い出深い作品の一つです。印象に残っているのは、(主演の)杏ちゃんが、すごく料理が好きだったこと。いくつかの産地の昆布と、かつおぶしを何パターンもの味付けで飲み比べするという大阪でのシーンがあったのですが、撮影の合間に、すごく喜んで味見をしてくれたのを覚えています。
杏ちゃんは撮影で大阪に滞在している間、ずっと自炊をしていたらしくて、『昨日はこういう料理を作ったんですよ』なんて話もしてくれて。そうやって常日ごろから料理をされているだけに、料理のシーンで『こうしてください』と調理中の動きについて説明すると、彼女はすぐにできちゃうんですよ。普段料理をやらない方の場合、こちらの説明が十分に伝わらないこともたまにあるんですが、杏ちゃんは完璧に、というか、こちらが求める以上に上手にやってくれましたね」
──あのドラマは料理が大事な要素の一つでしたが、何かこだわられた点は?
「特にこだわったのは、味噌汁の湯気(笑)。スタッフの方々は、料理を用意する少しの待ち時間ももったいないと考えるみたいで、リハーサルの段階で『冷めてもいいからお椀によそっておいてください』と言われたんですが、『熱々の味噌汁を入れさせてください』と言って、具材だけをお椀に入れた状態でリハーサルをしてもらって、本番直前に、ヤカンに入れた熱々の汁を注ぐようにしたんです。CMの撮影でもよくやる手法なんですけど、味噌汁って、湯気が立っているかいないかで、印象が全然違うんですよ。湯気が立っているだけで、おいしそうに見えるんです。のんびりした性格の私も、そこは譲らずに頑張りました(笑)」