見るものを翻弄する、まさに生まれながらのカメレオン俳優
朝ドラ「半分、青い。」(NHK総合ほか)で中村倫也演じる“マアくん”こと朝井正人が、途中で退場すると視聴者に大きな喪失感を与え、再び登場するとファンを歓喜させた。ゆるふわで脚本の北川悦吏子いわく「ホイップクリームみたいな男子」は、視聴者を虜にしたのだ。「半分、青い。」と同時期の2018年に放送、公開された作品では、ドラマ「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系)で競艇狂いのツンデレシェフ、「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」(Hulu)ではちょっと抜けてる刑事、映画「孤狼の血」ではぶっ飛んだヤクザと、まったく雰囲気の違う役柄をこなしていた。以前から「カメレオン俳優」と称される由縁である。
そんな中村倫也は、写真集「童詩」発売に際して、8月9日、バナナマン・設楽統が司会を務める「ノンストップ!」(フジテレビ系)にVTR出演。わずか10分弱のVTRだったが、そこには彼の魅力が凝縮されていた。写真集のタイトルについて中村は「童詩というタイトルを自分で考えたんですけど、自分がわりとめんどくさい人間だからめんどくさいタイトルがいいなと思った」と語った上で、共演者や仕事をする周りの人たちによくあだ名や異名を付けられると明かした。そのひとつが「ひねくれ素直」。まさに中村倫也を一言で表した絶妙な異名である。
デビューしてすぐのころ、「誠実なヤツ」を演じてくれと言われた。けれど「誠実」の意味がいまいち分からなかった彼は、「誠実」を辞書で調べたりもした。が、結局分からなくてデタラメに演じたら、それがウケたという。それから演じるのが楽しくなっていった。
◆てれびのスキマ◆1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」「TV Bros.」やWEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載多数。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』『コントに捧げた内村光良の怒り』など。新著に『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』