何色にも染まってない人を探してた
――久野くんを四三役に抜擢したのはなぜですか?
全国でオーディションをやったんです。もちろん事務所に入っている子も含めて、1500人くらいの応募があったらしいです。
主人公が持っている独特の“田舎もん”な感じといいますか、素朴さだとか作っていない感じを出せる、まだ何色にも染まっていない人を探してたんです。最後の最後に、やっと「見つかった」って思ったのが、素人さんだった久野くん(笑)。どうしようかなって思いました。
金栗さん自身もオリンピックなんて何も知らない頃のお話なんです。ただ健康になりたくて走ってただけなのに、世界まで連れて行かれる。なので、計算高くない感じの人とかが、この役にはいいなって思ってて、そういう素人さんにしたのかもしれないです。それを勘九郎くんにも引き継いでもらいたくて。まっすぐに走っていく人になって欲しかったので、そういう人を選びました。
でも、幸いそんなにせりふがなかったので、台本渡さずに、なんとか本人をごまかしながら撮影しました。
――なぜ台本なしにしたんでしょうか?
だって、当時7歳で、台本なんて読んだこともないし、「この人をお父さんだって思え」って言ったって、できないじゃないですか。子どもだから。
「こういうドラマなんだよ」って言いながら、うまいこと導きながら撮っていったので、すごい素の部分が出ていると思います。
「そんな間で、そんな新鮮な顔するんだ」って大人の俳優たちも刺激されるくらい、プロの役者さんにはない魅力みたいなものがあって、すごくよかったです。本人が理解していない魅力なんですけどね。
山道を登ってるときに、わざと暗い道に誘っていったら、泣き出したりするんです。台本なしっていうスタイルじゃないと、そういう部分は出てこないんですよね。
第1話って、すっごいいっぱいキャストが出てるじゃないですか。第2話って、本当に知らない人たちがずっと出てくるから、相当強烈な個性で引っ張っていかないとと思ったので、そういう人を見つけるのにすごい手間取って、時間がかかって。さらに撮るのも大変だったんですけど、多分すごい面白くなってると思います。
また第1話と違う魅力がありますよ。第1話は、豪華で芸達者な人たちばかりですけど、すっごい下手な子が出てきますんで(笑)。その落差も面白いと思う。
――久野くんは熊本出身の子なんですよね。
東京からももちろん募集したんですけどね。でも地元の子っていうポイントは大きいです。
でも、今の若い子って方言をそんなしゃべってくれないんですよ。感情が高ぶった時だけ出るんです。なので、(感情が高ぶるところまで)持っていかないと、「方言出さない」っていう顔するんで大変でした(笑)。