「いだてん」隈取で登場する主人公、暑苦しい“天狗倶楽部”…盛りだくさんの初回はどうやって?
大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の初回をもう見ただろうか?
1912年に日本で初めてオリンピックに出場した男・金栗四三(中村勘九郎)と、1964年の東京オリンピックを成功に導いた男・田畑政治(阿部サダヲ)という2人の主人公を、宮藤官九郎がオリジナル脚本で描く本作。
1月6日に放送された第1回「夜明け前」は、明治と昭和の時代を行き来しながら物語を彩るキャラクターたちが続々と登場する、プロローグのような構成になっており、前半の主人公・四三の登場シーンはラスト5分という演出で、視聴者の度肝を抜いた。
そんな盛りだくさんの初回から一点、1月13日(日)放送の第2回「坊っちゃん」では、物語は四三の少年時代に巻き戻る。熊本の片田舎に暮らす虚弱体質の少年が、いかにして健脚を手に入れるのかが描かれる。
本作のチーフ演出であり、第1回、2回の演出を務めたのは、「その街のこども」(2010年)や、連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年)、そして「トットてれび」(2016年)などを手掛けた井上剛氏。
チーフ演出として、「いだてん」に企画の立ち上げから携わってきた井上氏に、本作の魅力に迫るインタビューを行った。
意識したのは、「キャラクターが痛快であること」
――チーフ演出として、4年前からこの作品に携わっているそうですが、全体を通して意識している点はありますか?
キャラクターがまず痛快であることです。
普段の大河ドラマと違って、スポーツを題材にしているので、殺陣や合戦の代わりに、そこに生きた人たちの肉体表現を見せていけたらと思っています。
あと時代感ですかね。今まであまり見たことがない時代。
自分たちなりに時代劇というものを楽しみたいと思ったのが、この企画の始まりなんです。だから、僕たちなりに、いっぱい資料を読んだり調べたりして、時代劇としては見たことがない時代だけど、自分たちが通ってきた道だって思えるようにやっているところがあります。
近代って授業であんまり習わないじゃないですか、あれが辛いなって思ってたんです。
――確かに、近代って分からない部分が多いですね。
けっこう、みんな近代弱いですよね。弱いからこそ、そこが一番やりたいところだったんです。明治大正昭和が、どういう時代だったんだろうって。
僕らが資料見て、ビビッときたものは取り入れていきたいなっていうことは思っています。
――宮藤さんの脚本の魅力はどんな部分だと思いますか?
もう、言語を絶するほどの頭の良さで…。
僕では、正直読みきれないほどの量の資料を、自分の頭の中に叩き込んで、そこからエピソードを取捨選択して1話分を作るっていうことを、たった2、3日でやってくるんです。
もちろん、そこからはみんなでいろんな工夫をして直していくんですけど、なんでこんなことを思いつくんだろうって思います。
宮藤さんは資料と資料を間を創作で繋いでいくんですけど、僕らがさらに調べていくと、その創作が合ってたっていうことが後から分かってくるんです。
例えば、嘉納治五郎さんとか、天狗倶楽部の人だとか、可児徳さんって映像も残っていなくて、写真くらいなんです。でも、その人と話したことがある方とかに話を聞いていくと、どうやら描かれているキャラクターが間違ってないんですよね。「なんだその予知能力!」って思います(笑)。
第2回から登場する、勝地涼さん演じる美川(秀信)さんとかは、金栗さんの友達なんですけど、何者でもない人なんです。だから、資料も残ってないんですけど、僕らが遺族の方々にお話を聞きにいったら宮藤さんの創作があながち間違ってなかったことが分かりました。
何も知らない無名の人たちを、あのキャラクターまで描きこんでいくすごさに舌を巻きます。