宮藤官九郎が脚本を務める大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)に、松尾スズキが出演している。
本作は、中村勘九郎と阿部サダヲ主演で送る、日本とオリンピックの歴史物語。日本初参加の1912年のストックホルムオリンピックに出場した男・金栗四三(勘九郎)と、1964年の東京オリンピック開催に奔走した田畑政治(阿部)という2人の主人公がリレー形式で登場し、物語を古今亭志ん生(ビートたけし)がナビゲートしていく。
松尾が演じているのは、のちの志ん生である美濃部孝蔵(森山未來)の最初の師匠となる落語家・橘家円喬。
孝蔵は「飲む打つ買う」の三道楽に全てを費やす“フーテン生活”を送っていたが、円喬の落語に魅了され、落語に打ち込むようになっていく。
明治の東京で絶大な人気を誇った名人落語家を演じる松尾に、意識した点や本作の魅力を聞いた。
落語をするのは「音楽家でいうとDJに近い」
――落語家の古今亭菊之丞さんの落語指導を受けたそうですが、そこで気づいたことなどはありましたか?
指導を受ける際に、テキストとして落語の資料をもらうんですが、それを丸覚えしていっても、師匠(菊之丞)は毎回言い方を変えてくるんです。
だから、丸覚えするのではなく、その時その時の自分の調子に合わせて、自分で話を編集して喋らなければいけないんだということがすごく新鮮でしたね。ドラマの世界では、そういうことがあまりないので。
落語は苦労よりも発見の方が多いので、楽しくて楽しくて! 覚えることが苦痛じゃなかったです。
――落語には具体的にどのような発見があったんでしょうか。
落語家の方々って、演者であって演出家なんだなって思いました。その日のお客さんの顔色を見て、マクラ(演目を話す前の小噺)を決めたり、話を端折ったり、結構自由に頭の中でお話を編集していらっしゃるんです。
だから、一つ一つの言い回しでも、スッと終わることもあれば、何回か繰り返したり、音楽家でいうとDJに近い。情景描写も一人でやるし、多重人格を演じながら、その場の空気を決めていくので、そういうところは演出家としてすごく勉強になりました。
演出家の人は一回やってみたらいいのにと思います(笑)。
――練習してきた落語を、寄席のシーンでエキストラの方々を前に披露したときは、どんな気持ちになりましたか?
エキストラさんは、「笑ってください」って指示をされているので、何を言っても笑ってくれる状態っていうのは天国なのか地獄にいるのか分からなくて不安になりました(笑)。面白い体験でしたけどね。
エキストラさんもすごく頑張るので、僕の声がかき消されそうになっちゃうんです。最初は丁寧に話してたのに、最終的には大声出してるという。それも“ライブ感”があって楽しかったです。