<いだてん>中村勘九郎のダークな表情も飛び出す?演出・大根仁が案内するシベリア鉄道旅
ダークな役が絶対似合うなって昔から思っていたんです
――第9回で描かれる四三の人物像として、意識して撮影された部分とかはありますか?
金栗さんは、これまで“天然キャラ”というか「走るの大好き!」みたいな分かりやすいキャラクターだったと思うんですけど、9回ではちょっと違います。
僕も実際にシベリア鉄道に乗ったときにそうだったんですけど、1週間も2週間も狭い部屋に男同士でいるとものすごいストレスが溜まってきて、ちょっとブラックな部分が出てくるんですよ。9回の四三は、“ブラック四三”がちょっと見えてくるので、性格の悪い自分としても、この回が担当できてよかったって思います(笑)。
金栗さんが見たこともない目や見たこともない表情をするシーンがあります。生まれも育ちも違う三島に対する嫉妬心とか、単純にイライラしてるところとか。
9回はそれを乗り越えて2人がどうなっていくかっていう物語なので、金栗さんに関しては、そこが見どころです。
金栗さんと勘九郎さんって、僕の中でどこか共通する部分があるんです。すごく真っ直ぐな人だと思ってたんですけど、今回初めて仕事してみたら、意外な部分がいっぱいあって。
そういった勘九郎さんご本人の、あんまり人に見せたことのない表情みたいなものも撮れたんじゃないかなって自負しております。
――勘九郎さんと初めてご一緒して、どのような印象を受けましたか?
もともとうまい人だなと思ってました。でも、勘九郎さんってダークな役が絶対似合うなって昔から思っていたんです。
さっきも言ったように、第9回は“ブラック四三”が少しだけ出てくるので、そういった意味では、少し垣間見せることができたような気がします。
今回は無理ですけど、マッドな感じの役も似合いそうだと思ったので、いつか撮りたいです。
――ダークな役が似合いそうだと思ったのはなぜですか?
いろんな作品とか、普通に中村家のドキュメンタリーとか見てたときに思ったんですよね。
ダークっていうだけではなく、なんか、業の深い部分とかを表現できそうというか…。
お父様の(十八代目・中村)勘三郎さんが生前、「顔」(2000年)っていう映画で、ものすごくひどいやつの役をやっていたんですけど、それがひどいんだけどめちゃくちゃファニーだったんです。そういう勘三郎さんを受け継いでる部分は絶対あるなって思っています。
――撮影中の勘九郎さんの様子はいかがでしたか?
これは裏話になっちゃうんですけど、シベリア鉄道の撮影は、実際はストックホルムオリンピックの撮影をやった後だったんです。10~13回のストックホルムでのシーンは、夏にロケで撮影しているので。帰ってきてから、四三と弥彦がまだそんなに関係性が進んでない時点の話を撮影してるんですね。
もちろん二人ともプロだから、そういうふうに演じるんですけど、ストックホルムで3週間くらい濃密な時間を過ごしてきたからか、勘九郎さんと斗真が、ある種の戦友みたいな空気感になっていた部分があって。
それは、演技を見ると分かってしまうので、「まだそこまで進んでませんよ」っていう、仲良くなり過ぎてる二人を、もう一回引き剥がすっていう作業はありましたね。