<試写室>「特捜9」“令和最初”に昭和生まれの男たちが見せるいぶし銀の演技
主観に満ちたレビュー
変わらないでほしい、と言いつつ第2シリーズでは、宗方班長を演じる寺尾のアイデアでこれまでのペアだけでなく、シャッフルしたペアでも捜査を担当するということで、9係時代含め今までにない新鮮味が味わえている「特捜9」。
第4話ではペアではないが、いきなり変わった組み合わせが見られた。宗方班長と、たまに登場するレジェンド鑑識課員・猪狩(伊東四朗)だ。この2人がそろってご遺体発見現場に臨場するとは、“令和最初の特捜9”はただ事じゃなさそうな予感。
加えて伊東のもとに羽田が駆け寄ると、それだけでいと“おかしな”気持ちになるのは、私だけではあるまい。ええ、言いたいだけ。
次第に分かることだが、この事件は宗方班長×猪狩×神田川警視総監(里見浩太朗)…この3人が過去に絡んでいる事件って、ただ事じゃなさそうな予感(2回目)。関係ないけど、この3人がそろったら某ア○ンジャーズより強そうだ。
そんな中、今回事件のカギを握る1人、喫茶店マスター・沢田真介役のおかやまはじめに着目。個人的には大好きな俳優だが、失礼ながら名前を聞いただけでどんな作品に出ている俳優かピンとくる人はあまり多くはないだろう。だが、たぶん顔を見れば「ああ~!」となるほど、どんな作品にも出ている名脇役だ。
それもこういうミステリードラマの被害者家族や“被疑者の1人”の演技をやらせたら天下一品!
こってりでもなくあっさりでもない、言うならば“こっさり”な演技は絶妙に“匂わせる”ものがあり、例えば被疑者だったら最後の最後までどっちに転ぶか分からない演技をする。令和最初は、昭和生まれのいぶし銀のゲストにも注目してほしい。
あとは、主任ぶりが板についてきた直樹(井ノ原)や、子犬感あふれる新藤(山田)ら特捜班メンバーの“いつも通り”の働きぶり、レジェンド俳優・伊東四朗と清楚系な役どころが逆に新鮮(失礼)な松田るかの喫茶店でのやりとりもほのぼの…と思いきや、さすが猪狩(伊東)。
あの手相読みにあんな意味があったとは、鑑識じゃなくて刑事なんじゃないかやっぱり。
それにしても、この第4話がどうこうという話ではないが、最近の刑事ドラマは割と「えっ? 殺しの動機それだけ?」「そんなに簡単に人って死んじゃうのか…」という、あえて簡単に殺人に発展するような事件を描くことが格段に増えている気がする。
誤解を招くので先に否定しておくと、結末が分かるまでの謎解きの部分に関しては複雑さ、難解さが増しているので、決してミステリードラマがつまらなくなったという意味ではない。
あえて事件への導入を浅くすることで「あなたもそんな単純な動機で人を殺めてはいけません」「こんなに簡単に人は死ぬんだから、争ってはいけません」という作り手のメッセージが込められていて、視聴者に警鐘を鳴らしているのではないだろうか。
それは気のせいかもしれないが、それくらい今の世の中、明日何があってもおかしくない時代になっている。昨日の友は今日の敵じゃなく、昨日の友は今日も友でいいじゃない。それくらい、冷静な人が増え、平和な時代がくることを祈りたい。
しかし、平成から令和へ…元号をまたぐ瞬間まで仕事をしているなんて、30年前、ハナタレ小僧だった自分には知る由もないんだろうな。つい特捜班メンバーと「一件楽着」で一緒にカウントダウンしちゃったよ。
令和最初だからこその小粋な演出はあるものの、奇をてらうわけではなく、いつも通りのクオリティーの特捜9がそこにはあるので、和やかに健やかに見てほしい。
この仕事をしていると、ゴールデンウイークも年末年始休暇もただのファンタジーだが、そういう季節感関係ないのも嫌いじゃない。令和も働き方改革と逆行するけど、ぼちぼちやっていきたいところだ。
さて令和最初の朝食は、某ライダーヒロインあるいは極道アイドルっぽい美女と喫茶店でカレーが食べたいなあ。
文=人見知りシャイボーイ