最優秀作品賞は「3年A組―」 福井雄太P『菅田将暉は“真面目で一生懸命”の権化』【ドラマアカデミー賞】
「ダメだとされていることを全部集めた」異色の作品作り
――キャリア10年目の福井さんにとっても今作は一つの到達点ということになりますか?
脚本の武藤さんも「自分の世界を自分で勝手に閉じ込めていた」と言っていたんですが、僕も含めてテレビマンにはある種のタブーがあるんですね。「学園ドラマは当たらない」とか「年齢が上の人に見てもらわないと視聴率が…」と考えてしまったり、「1話完結で見やすいものを」「原作があって、店構えがわかりやすいものを」と求められる傾向があった。それを今回は全部、裏返したわけです。
「3年A組―」は学園ものであり、若い人に向けたもの。原作なしのオリジナルだし、連続して見ないと展開が分かりにくい。ダメだとされていることを全部集めて、ダメじゃないと証明しに行きました。プロデューサーである僕としても存在の証明が懸かっていて、「これが失敗したら辞めよう。たぶんドラマ作りに向いてないんだ」とまで思っていました。
同時に、6年越しの念願として一緒に組むことができて、民放GP帯の連続ドラマ単独初主演という場を預からせてもらった菅田将暉を不幸にしたくないという気持ちも強くありました。だから、本当に覚悟を決めるタイミングだったんだと思いますね。
――旋風を巻き起こした「3年A組―」を経て、今後はどんなドラマを作ろうと思っていますか?
今回はキャストとスタッフ、みんなの力を借りてひとつの財産になる作品をやらせていただいたのですが、ダサいやつにはなりたくないというか、10年経っても「俺、『3年A組―』を作ったんだ」と言っていたくはない。だから、また別の面白いドラマを作りたいなと思います。
本当に今回は、SNSでの反応や直接のお便りをいただいて、街角でも「3年A組―」のことを話しているのが聞こえてきました。「つまらない」「面白い」のどちらでもいいけれど、とにかく声を出してもらえる作品で、寂しい思いをせずにドラマを作れました。ただ逆に。反応がなくて寂しい気持ちになってしまう場合も自己責任なわけで…(笑)、やっぱり毎回ラストダンスというか、覚悟を持ってやらなきゃいけないんだなと実感しましたね。その意味では、今後も「3年A組―」のように寂しい思いをしないドラマを作っていきたいと思います。
取材・文=小田慶子