<スピードワゴン小沢一敬映画連載 このセリフに心撃ち抜かれちゃいました>第4回 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんならではの「僕が思う、最高にシビれるこの映画の名セリフ」をお届け。第4回は、女と男の歴史的テニス・マッチを描く感動のスポーツ・ドラマ『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』('17)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?
第4回 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
──今回は『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』というチョイスでした。
小沢「そもそも俺は、映画を観る前にあんまり情報を入れたくないのね。タイトルだけで勝手にストーリーを想像する時間も好きだから。それで今回のタイトルが『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でしょ。ヒーローものなのか、それともセクシーなお姉さんたちが戦う映画なのかなぁ、と思って観たら、まったく想像と違う中身で」
──このタイトルは、1973年に実際に行なわれた女子テニス界最強の29歳ビリー・ジーン・キングと、55歳の元男子世界王者ボビー・リッグスによる伝説的なテニス・マッチの名称です。世間的には男女平等が叫ばれていましたが、テニス界はまだ女子の優勝賞金が男子の1/8という男性優位主義が支配していた時代の話で、それらを知らずに観ると、タイトルと映画の中身にギャップがありますよね。
小沢「うん。俺はポスターのビジュアルに写ってる2人は、(ビリー・ジーン・キング役の)エマ・ストーンが女性ヒーローで、(ボビー・リッグス役の)スティーヴ・カレルは司令官だと勝手に思ってたから(笑)。だけど、とても面白い映画だった。俺はテニスにまったく興味ないんだけど、それでもすごく楽しめたし」
──確かに、誰にでも楽しめる映画に仕上がってます。
小沢「俺がいつも自分たちのライブをやる時に考えてるのは、『予想は裏切りたい、期待は裏切りたくない』ってことなんだけど、この映画はまさにそういう作品だったと思うんだ。しかも、後で調べたら実話がベースだって分かって。やっぱり世の中は面白いなぁと」
──小沢さんの期待を裏切らなかった部分というのは、どの辺ですか?
小沢「やっぱりさ、映画を観るときにはワクワクしたいし、ハラハラしたいのね。若い頃は映画に深いメッセージとか感動を求めてたこともあったけど、年を取ってくると、ただ『カッコいいじゃん!』って言える映画を好むようになってきて。そういう意味でこの映画は、素直に『カッコいいじゃん!』って言える映画だった」
──年を取ると期待を裏切らないものを観たくなるっていうのは、まったく同感なんですけど。それって、なんでしょうね?
小沢「たぶん、もう落ち着いちゃったんじゃない?(笑) だから、ホントによくないと思うのは、最近、CDや漫画を買いに行くとね、最初は新作に手を伸ばすんだけど、最後は昔から好きだったやつを買っちゃうんだよ。そういうとこ、『年取ったなぁ』って思うよ」
──でもこの映画は、“期待を裏切らない”というエンタメな包装紙の中に、重要なテーマが包み込まれてます。
小沢「そうね。それが“セクシーズ”の部分なんだろうけど。性別を意味するセックスだからね。同性愛のことも描かれてるけど、タイトルにある“バトル”は、主に女性たちが“自由”を勝ち取るための“闘い”の意味でもあるよね」