<ミヤザキタケル 映画連載 第4回>理不尽な現実に立ち向かうための確かな希望【ザテレビジョンシネマ部】
映画アドバイザー・ミヤザキタケルがおすすめの映画を1本厳選して紹介すると同時に、あわせて観るとさらに楽しめる「もう1本」を紹介するシネマ・マリアージュ。第4回は、共にどうすることもできない現実を前に打ちひしがれ、それでもなお光を追い求めようとあがき続ける者達の姿を描いた『オー・ルーシー!』と『スリー・ビルボード』をマリアージュ。
『オー・ルーシー!』(‘17)
2014年に桃井かおり主演で制作された平栁敦子監督の短編映画を、寺島しのぶ主演で長編映画化した日米合作の人間ドラマ。アメリカ人英会話講師ジョン(ジョシュ・ハートネット)に恋したアラフォー独身OL節子(寺島)の不器用で救いようのない恋模様を通し、人が前へ進んでいくために必要なモノを描いた作品です。
今の自分に満足している人なんてそうはいない。より良き自分を、人間関係を、生活を、人生を追い求めて生きている。が、人はそう簡単には変われない。人生を変えるほどの出来事はそう頻繁には訪れない。追い詰められて、ようやくそのチャンスが訪れる。というより、チャンスがあったことに気が付けるようになるのだと思う。
現状の寂しい生活が良くないことは節子も重々承知していた。しかし、自分ではどうすることもできず、感情を押し殺し、他者の言葉を拒絶し、ごみであふれた部屋のごとく吐き出すことのできない想いだけがたまっていく。そんな中、ジョンとの出会いが凝り固まっていた彼女の心をもみほぐす。授業の一環でするハグによって他者のぬくもりを感じ、異性への欲求を自覚し、堅く凍り付いていた心に雪解けが訪れる。精神的にも肉体的にも節子の心はこじ開けられ、徐々に仮面が外れていく。不意に訪れたチャンスを前に、行動を起こすことを彼女は選ぶ。