スピードワゴン小沢一敬が「最高にシビれる映画の名セリフ」を紹介! 第5回の名ゼリフは「明日から世界は私たちの思いのまま」<ザテレビジョンシネマ部>
――そんな大絶賛のこの映画の中で、小沢さんがシビれた名セリフはなんでしょう?
小沢「明日から世界は私たちの思いのまま」
――カンニングをビジネスにして稼いできた主人公のリンが、世界各国で行なわれる大学統一入試=STICで最大のカンニングを仕掛けるためにシドニーに渡航。カンニング作戦の相棒として雇った真面目な苦学生バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)と一緒にオペラハウスを眺めてる時に彼女がつぶやくひと言です。リンには友人たちのように金銭的な余裕もなく、一人親である厳格な父親との約束を破って行なうイチかバチかの作戦。実際のセリフというよりも、彼女の心の声のように聞こえる言葉です。
※編集部注:ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。
小沢「これ、実際にはそうならないんだよね。たとえ作戦がうまくいったとしても、思いのままなんてなるわけがない。でも、“そう思える瞬間のある人生っていいな”、と思うんだ」
――あの場面は、ある意味で彼らの人生のピークで、特にリンは、“私は完璧だ”って感じてる瞬間ですよね。
小沢「若い時はみんな一度は勘違いするんだよね。“自分は無敵なんだ”って。逆に、それがない人生って寂しいから。そんな彼女の姿を見るのはほほ笑ましいし、うらやましいし、恥ずかしいし。そういう意味で、いいセリフだなと思ったのよ」
――まさに若者らしい思い込みの激しさと危うさを内包したセリフ。
小沢「俺が(井戸田)潤と、2002年の『M-1グランプリ』の敗者復活戦を勝ち上がって決勝進出を決めた瞬間に、潤がひと言『明日から忙しくなるね!』って言ったんだけど、そんなわけねえんだよ(笑)。実際、M-1に出たぐらいじゃ、それほど忙しくならなかった。でも、そう思えるやつって主人公なんだよね。“世界は俺中心で回ってる。俺たちのショーが始まるぜ!”って思える生き方。本気でそう思って、本気で生きてる主人公だからこそ言えるセリフでしょ」
――主人公キャラは小沢さんのほうだと思われがちですが、実は井戸田さんのほうだった?
小沢「そうそう。俺はそんなこと言ったことないし、思ったこともないけど。潤はいつでも主人公。タイプ的には(井上雄彦原作の)『SLAM DUNK(スラムダンク)』の主人公、桜木花道ね。で、俺は流川楓ですらない。あえて言うなら、花道の仲間のヤンキー、水戸洋平。だから『俺もああいうセリフを言える人間でいたいな』って思いもあって、このセリフを選んでみたの」
――世界のオザワ”でも、そういうセリフは言わないんですね。
小沢「うん、言わないね。まあ、そういうセリフを言う人は、ただ“主人公になりたい”のかもしれない、という逆の考えもできるじゃない。本当に幸せな人は、幸せなのが当たり前だから『幸せだ』と言わないよね。それと同じ。俺はあえてそんなセリフを言わなくても、生まれながらの主人公だからさ(笑)」
小沢一敬
愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。スピードワゴンの新しいトーク・ライブ「話スピードワゴン」を開催中。