<映画アドバイザー・ミヤザキタケル厳選作品連載>第5回 現実と見紛う映画体験をあなたに【ザテレビジョンシネマ部】
序盤において明かされる3人の少年時代は、お世辞にも褒められたものではない。むしろ、数多くの問題を抱えていた。そんな彼らの姿を通して描こうとしていたのは、良い職業に就いたり、夢を叶えるのには多くの条件を満たさなければならないが、正しいことをなすのには地位も金も見てくれも関係ないということ。どんな人間でも、正しいことを行なえるのだということ。
何もテロに直面した際に、真っ向から立ち向かえと言っているわけじゃない。訓練を受けたり武術の心得がある者でなければ、余計な被害や悲しみを増やしかねない。奇跡的に状況を打破できて一躍ヒーローになれる可能性もあり得るが、大切なのはそこじゃない。人にはそれぞれ自分にしかできないことがある。それぞれに見合った役目というものがある。問われることになるのは、その役目を見いだせているのかどうか、果たせているのかどうか、いざという時に持てる力のすべてを注ぎ込めるのかどうか。
真実はいつだって一つだけど、受け取り方はさまざま。この事件はテロを起こす人間の愚かさだけではなく、愚かな行為にも負けない人間の気高さをも感じさせてくれるはず。自分のやるべきこと、なすべきだと信じられることを見つけられたのなら、今やらなければ意味がない。ひとりひとりがそうできたのなら、おのずと世界は変わっていく。きれい事かもしれないが、彼らの示した勇気が、この作品こそがその証し。
僕たちが生きるこの現実に、より良き影響を与えてくれる2作品だと思います。ぜひセットでご覧ください。
ミヤザキタケル
長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。