「きのう何食べた?」が最優秀作品賞! 松本拓Pが受賞の喜びを語る【ドラマアカデミー賞】
「第101回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞」の作品賞に輝いたのは、西島秀俊、内野聖陽主演のドラマ24「きのう何食べた?」(テレビ東京系)。2人が演じる男性カップルの日常と、西島演じるシロさん(筧史朗)の何気ない手料理から伝わる温かさが多くの視聴者の心に響き、「LGBTの方が抱える不安や周囲の人々の葛藤や反応がリアルだけれど、軽やかに描かれていた」と支持され、主演男優賞(内野)、脚本賞、監督賞も獲得し、見事4冠を果たした。
同作を手掛けた松本拓プロデューサーに、作品と、主演を務めた西島、内野への思いを聞いた。
――まず作品賞を受賞された感想をお聞かせください。
僕はこれまで賞とは無縁だったので、斬新です(笑)。
――作品を拝見していて、よしながふみさんの原作へのリスペクトをとても感じました。
すごい原作だったんだなと、あらためて感じましたね。作っている最中は考えない方がいいので、考えなかったのですが、終わってみて実感するところがありました。
――主演男優賞1位が内野聖陽さんで、2位が西島秀俊さんでした。やはり、このお二人が演じられたことは大きかったですか?
大きかったと思いますよ、やっぱり。説得力が違いました。キャラクターが立った作品であればあるほど、演じるのは相当な説得力がある人でなければ厳しい。これだけ強い原作の作品に、説得力のあるお二人にご出演いただいたことが今回の賞をいただくに至った一番の要因だったのではないかと思います。
――ドラマの顔となったお二人にあらためて贈る言葉は?
この作品を好きでいてくださったことが大きかったと思います。好きでいてくださったから、役に入り込むレベルも違いましたし、あのお芝居が生まれたのではないかと。本当にありがとうございますとお伝えしたいです。
(矢吹)賢二という役は、内野さんにとっても斬新だったのではないかと思います。難しい役どころだったからこそ、役者心をくすぐったのか、パワーが違うなと感じました。
――そんな内野さんと対峙していた西島さんも終始楽しそうで。
そうですね(笑)。西島さんもかっこいい役どころが多く、普通の人という役は最近あまりないと思うので、やはり斬新だったのではないでしょうか。
――番組開始当初、LGBT作品というよりは「ご飯もの」として見てほしい、とおっしゃっていましたが、蓋を開けてみると、2人の関係性に心を打たれた、癒されたという声が多く集まりました。それはなぜだと思いますか?
テーマを押し付けていなかったので、重くなかったのではないかと思います。おいしいご飯を食べている2人というのが前提にあって、一つ引いて見た時にそういう(2人の関係性という)テーマがあることが見える。原作もそうでしたが、脚本も2人の悩みに直面する形にせず、感じる人は感じてくださいという方向性だったので、ご覧になる方にもいい受け止め方をしていただけたのではないかと思います。
――やはり脚本の存在は大きかった?
安達(奈緒子)さんの力は強かったです。安達さんじゃなかったら、どうなっていたのかな?というぐらい。安達さんは大変お忙しい方なのですが、運良く少しだけお時間があり、書いていただけたんです。執筆時間は短かったですが、かなりのクオリティーのものを仕上げてくださいました。
――LGBT作品ということで配慮した点は?
生々しくしないことと、ゲイの方たちへのリクペクトです。しかし、あまりケアし過ぎるとリアリティーがなくなるので、内面的な部分はきちんと追求しました。生々しくすると目を背ける原因にもなりえるので、脚本の段階でその辺りのバランスはかなり意識しました。脚本の安達さんと監督の中江和仁さんたち、作品のキモとなる心臓部分がバシッと決まったことも大きかったと思います。
――もう1つの主人公とも言えるご飯は、どれも本当においしそうでした。
監督やスタッフの皆さんがさまざまな工夫をしてくださったので、それがおいしそうな絵につながっていたと思います。僕としては特別リクエストをする必要もなく、「おいしく撮ってください」ぐらいで。中江監督はもともとCMを撮っている方なので、料理撮影が上手なので、事細かく言う必要もなかったです。
――原作には続きがありますし、続編を期待する声がかなり集まっています。
続編は僕が決められることではないのですが(笑)、関わった人間はみんなやりたいと思っていると思いますよ。
取材・文=及川静