三木聡ワールドはいつも浮世のコードを逸脱するマジカル・ミステリー・ツアーだ。我々の常識とされているものを一旦対象化することで、物事には別の見方があるという“気づきの哲学”を得る。そうやって解放されていく本作での麻生久美子のたたずまいを、『音量を上げろタコ!~』の吉岡里帆はどこか引き継いでいる印象がある。
以上の2作に加え、内田有紀が主人公の青年(亀梨和也)を不条理な世界に引き込む謎の女性を怪演した『俺俺(2012)』(9月27日夜7:00 WOWOWシネマほか)も観れば、もうすっかり三木聡の不思議な世界と“女優プロデュース力”にハマっているはずだ。『イン・ザ・プール(2005)』(9月27日深夜0:45 WOWOWシネマほか)の市川実和子(強迫神経症のルポライター役)や『ダメジン(2006)』(9月27日夜11:00 WOWOWシネマほか)の市川実日子(寂れた靴屋のバイト女子役)も絶品の“ヘンな魅力”。他にも、上野樹里主演、蒼井優共演の『亀は意外と速く泳ぐ(2005)』や、小泉今日子&吉高由里子共演の『転々(2007)』といった傑作など、どんどん三木聡ワールドを女優とともに深掘りしていってほしい。
1971年和歌山生まれ。著書に「シネマ・ガレージ」など。近刊「フィルムメーカーズ 大林宣彦」(宮帯出版社)にも執筆参加。
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