今から100年前、まだ映画が「活動写真」という名で呼ばれ、音もなくモノクロだった頃に花開いた日本独自の映画文化の担い手・活動弁士(カツベン)。
彼らのしゃべりを聞くために映画館に人が集まる、そんな時代を描いた周防正行監督の最新作「カツベン!」が公開中だ。
オーディションで主役を射止めた成田凌と監督の互いの印象や、役者や監督とも通じる活動弁士観を直撃。活弁ならぬ“勝弁”ということで、勝負メシも聞いた。
――12月13日から映画が公開中ですが、周囲の反応はいかがですか?
成田:初日に友達がいっぱい見てくれていたみたいで、すごい連絡きました。面白かったって。僕も映画館に見に行ったんですが、劇場全体が活性化されてて、「あ、ここで笑うんだ」みたいに感じることもあって、すごくうれしかったです。
――成田さんは準備期間も含め、この活動弁士の役に述べ616日間も向き合ったそうですが、監督から見た成田さんの印象はいかがでしたか?
周防:どなたか映画評で書かれていて「そうだよな」と思ったのですが、成田さんのようにかっこいい人がトボけた役をやると、鼻につくことあるんです。なのに、そういうところが一切なかった。
バラエティー番組に出ている成田さんを見ていると、「あ、この人勘がいいんだな」って思うんですが、オーディションでも現場でも、僕はそんなこと思わなかったんです。
だから成田さんの良さって何だろうって考えて、もしかしたら勘がいいのかもしれない…というのは、今になって思います。だけど勘がいいとか悪いとか、僕が知ってても知らなくても関係ないんですよね(笑)。芝居が成立しちゃえば。
そういう意味では、何がいいって理屈付けはこれからもいろいろできるんだろうなとは思いますが、でも本当に、最初に思ったよりおちゃめな人でした(笑)。
――東京国際映画祭では、同じくオーディションで選ばれたヒロイン・黒島結菜さんへの監督のコメントの熱さに、嫉妬(?)する成田さんが印象的でした。
(※周防監督は黒島について「きれいでかわいいのに、どこか自信なさげで、女優という職業についても懐疑的。私はここにいていいのかしら、という雰囲気が役に合っていた」と、同じく成田については「いろいろ候補はいたが、成田が演じた主人公は、僕が好きになりそうだと思って決めた」と語っていた)
成田:いえ、あれは“照れ”ですよ(笑)。僕へのコメントが短かったのは確かですけど。
周防:(笑)。オーディションって、会社の面接もそうだと思うんだけど、そんな短い時間会って話したって何が分かるんだっていうものですから。
黒島さんだって、後からあんなふうにいくらでも理由付けはできるんですけど、選んでる当時は何が正解かなんて分からないんです。
キャスティングっていうのはオファーでもオーディションでも本当に難しくて。でも、今回は本当に不満がなかった。珍しいです。
現場でもよく言われるんですよ。「監督は気に入らない役者さんが誰かすぐ分かりますよね。どんどんセリフが短くなる」って。まぁそういう場合、映画としていかに成立させるか考えるので、そうなっちゃうんですけど(笑)。
さっき仲間内の打ち上げでも言ったんですが、あのとき「えいや!」って決めた2人が本当に良い芝居をしてくれて、映画が自分の考えた以上に楽しいものになった。だから「俺、ほんとラッキーだな」って思います。
――監督に「勘がいい」「おちゃめ」と言われて、成田さんご自身はいかがですか?
成田:普通に生きてたら分からないですよね、自分では。ただ、“へんちくりん”になりたくないっていうのはあります。関係あるか分からないですが、「こうはなりたくない」というものは自分の中で実はいっぱいあるんです。
それが「勘」と言えるか分からないですけど、バラエティーで言うと、例えば「これがいい」「これはやりたい」ってなってくると寒くなったり鼻についたりするから、そうはならないようにっていう…危機察知能力的なものは強いかもしれないですね。
視聴者としてバラエティー大好きだし、面白い人もたくさんいて、そんな中で「何だコイツ」と思われないように、自分ができる事を全力でやったらいいかなって思います。
公開中
出演=成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
監督=周防正行
脚本・監督補=片島章三
(C)2019「カツベン!」製作委員会
【公式HP】http://www.katsuben.jp/