吉田「最近の小栗旬は、色気と人間のクズ感に磨きがかかってる」
――長い付き合いの中で実感する、役者として、人間としての魅力や、互いにここはちょっと…という苦情(?)があればぜひ。
吉田:今、舞台「アジアの女」で山内圭哉くんと一緒なんだけど(※取材時)、芝居始まる前に僕の楽屋に来て「鋼太郎さん…今、小栗から電話掛かって来て、『鋼太郎さんが僕の電話に出てくれない』『どういうことなんですかって伝えてくれ』って言うんですけど、どうしましょ?」って言うんですよ。「え…?」と思って着信を見たら3件くらいあって。
小栗:(笑)。
吉田:何も山内通して「僕の電話に出てくんない!」って言わんでも…。だから小栗くんね、ちょっと乙女なところがあるんですよ。よく電話を掛けてきてくれるけど、出ないとスネる。
横田:かわいいじゃないですか。
吉田:かわいいっていうか、ウザいよね!? どこの世界で男同士で電話して「何で出てくんないの…」みたいな人がいますかそんなの!
小栗:確かにウザいね(大爆笑)。
横田:自分でもそう思うんだ(笑)。
小栗:思う。いや、鋼太郎さんはね、最近よく竜也と飲んでて。それでベロベロになったタイミングで竜也から電話掛かって来るんですよ…どうせ連絡するなら、もうちょい早い段階で呼んでくれても! 俺行くんだけど!? ってことが非常に多い。それなのに俺の電話には出ないという…。
吉田:でも日本にいるか分かんないから旬は。あと、たまたま俺と竜也の家が近いってのもあって…。
小栗:結果連絡して来るなら意味ないじゃん! ほんとこの前なんて竜也が俺に謎の罵詈雑言を延々とぶつけて来て…ひどいでしょ!?
横田:こんな2人ですけど、板の上では強大ですからね。どこまで頑張ればいいのか、一抹の恐怖がありまして…大スターに、勇気と知恵と工夫で立ち向かっていく気分です。
小栗:というか、僕の中では、23歳で体験させてもらった「タイタス・アンドロニカス」のイギリス公演でご一緒したお2人のことを勝手に戦友だと思っていて。
正直あれほど興奮するような時間がその後あるのかって言われるとなかなかないまま生きてるので。その人たちとまたできるっていうのがとにかく楽しみで仕方がない。
横田:鋼太郎さんは蜷川さんと手法は全然違うんですけど、ソウルが似てるんですよ。すごいものを作りながら若い人を導くという…。それでいて言葉のチョイスが面白いから、必ず爆笑させてくれる。
あぁこうやって育てたら若い人たちみんな育つなぁ、なるほどなって学びがあるし、作品の解釈、役の深め方、一流の俳優として「俺だったらこう演じる」ってことを詳らかに教えてくれるから、それは同業者としてなかなか味わえる体験じゃない。毎回得してる気分です(笑)。
小栗:まさにそれ。たかだか3カ月ですけど、その間だけは鋼太郎さんの脳みその中をのぞけるので、どれだけ吸い付くせるのかっていう感じですね。
吉田:いや、演出がどんなに解釈を説明して指導しようと、ダメな人は出来ないから。でも2人は演出がある程度説明したことを100倍、1000倍にしてくれる俳優なので大変ありがたいんです。
ドラマの1000倍くらいのセリフをひと言も逃さず観客に届けるだけじゃなく、その人の個性、人生を乗せてその人にしかしゃべれないセリフにする。
できればそれができる俳優だけで芝居をしたいけど、なかなか難しい(笑)。だから僕の指導より、それを体現する小栗、横田の芝居を見て勉強する若手も多いと思う。
横田:あと旬はもう、魅力が服を着て歩いてるみたいな感じだからね。…端的に言うとモテるんですよ。もちろん画面でもモテるんでしょうけど、彼が舞台に立つとその公演期間中、非常にモテる!
一同:(含み笑い)。
横田:いえ、詳しくはしゃべりませんが、本当にノックアウトするくらいに周囲を魅了するんですよ。そういう俳優さん、舞台で思い浮かばないですよね。
面白い人、うまい人、楽しい人はいっぱいいるけど、旬は絶対的にかっこいい。男から見てもほれぼれしますし、イギリスで街中を歩いてても、みんな振り返って大変だったから(笑)。
吉田:その上、実は意外といろいろ勉強してるよね。ワイルドな色気もとても緻密で論理的。行きあたりばったりではなく、今の歳ではこれをやらなきゃとか、今の自分にはこれが足りないとか、自分の人生をよく考えいろんな根を張っていて面白い。ただ、すごく飽き性だけどね(笑)。役者は向いてないとか、プロデューサーになるとか言うし。
小栗:(笑)。
吉田:でも、この世代の俳優としては珍しく、ある匂いみたいなものを持ってるんですよ。色気もあるし、人間のクズ感もあるし、いわゆるイケメン俳優が何の苦労もせず二枚目の中年になりました、ではない要素が…見世物や劇に必要なまがまがしさが確実にある。
僕は蜷川さん演出の「カリギュラ」(2007年)でその片鱗を感じたんですよ。こいつの色気はなんだろう、こいつのクズっぷりは何だろう。破天荒で、傍若無人で、スケベで…最近それに磨きが掛かってきて、いい傾向なんじゃないかと思います。
横田:言われて、どう?
小栗:そうですね~。まぁやっぱり、隠せない魅力があるんですかね~(真顔)。ハハッ。
横田:うるさいよ!(一同爆笑)
小栗:それだけはね、うん(笑)。いや、本当にもうしばらくそんなことないですけど……あの、24歳で「カリギュラ」やったときは、ほんっとに……「モテるな、俺」って思いました。
一同:(大爆笑)。まぁ、時効だからね!
取材・文=坂戸希和美
<埼玉公演>
2020年6月8日(月)~28日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
<名古屋公演>
期間:2020年7月3日(金)~6日(月)
会場:御園座
<大阪公演>
期間:2020年7月10日(金)~20日(月)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
<キャスト>
小栗旬、横田栄司、吉田鋼太郎ほか
<スタッフ>
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団、ホリプロ
企画:彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会
劇場HP:https://saf.or.jp/arthall/information/detail/1010
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