「麒麟がくる」の主演も務める長谷川博己が併せ持つ“3つの顔”<ザテレビジョンシネマ部>
その男は、飄々とギラついている。凪いだ海のように泰然としているかと思えば、大時化の如く狂気と暴力性を爆発させる。俳優・長谷川博己は、静と動の落差が計り知れない。
4月12日に、長谷川が稲垣吾郎、渋川清彦、阪本順治監督と組んだ映画『半世界(2019)』(4月12日[日]よる9:00 WOWOWシネマほか)が初放送。今回は本作を中心に、大河ドラマ「麒麟がくる」の主演も務め、円熟期を迎えた彼の魅力を掘り下げていこう。
『半世界』は、40代を目前にした幼なじみ3人の日常に潜む懊悩や苦労、再生を見つめた人間ドラマだ。地元で暮らす炭焼き職人の紘(稲垣)とカーセールス業者の光彦(渋川)の前に、自衛隊に入ったはずの瑛介(長谷川)が帰ってくる。久々の再会を喜ぶ2人だが、瑛介はある出来事から心を深く閉ざしてしまっていた…。
本作で長谷川が担うのは、物語に起伏をもたらすポジション。突然の帰郷という“事件”で日常をかき乱し、忘れかけていた“友情”に火をつけていく。
序盤は他者を遮断する内省的な演技で波風を立たせ、傷心が和らぐ中盤は穏やかな表情で落ち着かせ、その後に起こったある出来事で、抑え込んでいた激情を爆発させる。自衛隊出身という役柄にひもづくアクションも用意されており、長谷川の実力が120%詰まった作品と言えるだろう。