朝ドラ「エール」弱点になりがちな“幼少期”時代をみごとにクリア 外見・仕草“青年期”を意識か
3月30日よりスタートした連続テレビ小説「エール」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか)。第1週について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が振り返る。
“運命の分かれ目”一気に描いた第1週
朝ドラこと連続テレビ小説「エール」がはじまった。今期から土曜日は、バナナマン・日村勇紀がナビゲーターをつとめ、1週間を振り返る企画が放送される。第1週の振り返りで日村は、今後、主人公・古山裕一(石田星空)の大切な友人となる村野鉄男(込江大牙)を推していた。途中、もうひとりの大切な友人になる佐藤久志(山口太幹)のことも気に入っているようなことを言っていたが、最終的には「鉄男」を選んだ形に。主人公の裕一のことにあまり触れていなかったけれど、それはまあ良しとしよう。
鉄男も、久志も、そして裕一も。第1週は子役が演じているのだが、この子役3人がとても良かった。
裕一は日本が誇る名作曲家・古関裕而をモデルにした人物で、子供のときは内向的だったが、音楽(作曲)の才能に目覚めていく。
鉄男は、ネタバレだが、やがて作詞家になる(※公式HPにも掲載)。腕っぷしが強く「乃木大将」というあだ名がつくほどのガキ大将ながら、「古今和歌集」を愛読するなど、文学にも通じている。ところが、家業である鮮魚店の手伝いをさせられて学校を辞めなくてはならないかもしれないという不遇が彼を襲う。頭もよくて運動神経もいいにもかかわらず、貧しくて才能を活かせない。この属性は魅力的である。
一方、久志はお金持ち。県会議員の息子で、いかにもお坊ちゃんという雰囲気。いけすかないやつにも見えるが、いつも唐突に裕一の前に現れ気取ったセリフを言う自分自身を「存在感はあるのに 気配を消すのが得意なんだ」と説明するユーモアがあって、悪い子じゃないことがわかる。ネタバレだが、彼はやがて、歌手になる(※公式HPにも掲載)。
作曲家の裕一、作詞家の鉄男、歌手の久志。3人そろって完璧な布陣である。第1週で未来の音楽仲間の数奇な出会いが描かれたというわけだ。おまけに、裕一は未来の愛妻・音(清水香帆)にまで会っている。裕一にとって、小学5年生の年は運命の分かれ目だったのである。そこまで一気に描いた第1週はいい出だしだったといえるだろう。