朝ドラ「エール」弱点になりがちな“幼少期”時代をみごとにクリア 外見・仕草“青年期”を意識か
大人の俳優たちに似ているような
やがて、裕一は窪田正孝、鉄男は中村蒼、久志は山崎育三郎、音は二階堂ふみが演じることになるが、子役たちの見た目や仕草がそれぞれ、うっすら大人の俳優たちに似ているような気がするところに配慮が感じられた。
朝ドラや大河ドラマは主人公の半生ないしは人生が描かれるので、たいてい最初は幼少期からはじまる。
ただし、ドラマの前宣伝では大人になったときの俳優たちが大々的に紹介されているため、その人たちが出てこない回はプロローグ感が強く、なんとなく本気で見ることができにくい。
早く成長した姿が見たいと思ってしまいがちなのだが、子役たちに、大人になったときが想像できる雰囲気があると、逆にその先が楽しみになる。さらに、子役たちの演技も申し分なく巧いので、子役時代も飽きずに楽しめる。「エール」第1週は、弱点になりがちな幼少期時代をみごとにクリアした。
また、反対に、子役が良すぎて子役時代をもっと見たかった！という気持ちになる作品もある。例えば、前作「スカーレット」と前々作「なつぞら」はそうだった。
2作とも、大人の俳優と子役はあまり似てなくて、子役の個性が全開だったのだが、彼女たちが懸命に演じる、貧しくても頑張っているという健気さが多くの視聴者の心を掴んだ。
「なつぞら」の粟野咲莉が労働の成果としてアイスを食べながら、草刈正雄に「無理して笑わなくていい 堂々としていろ」と言われるシーンは「なつぞら」のジャンピングボードになった。「スカーレット」の川島夕空は「女にも意地と誇りがあるんじゃー！」と叫ぶシーンがじつに痛快だった。
子役時代が大ヒットした伝説の朝ドラ「おしん」もそうで、幼い子が貧しさに負けずに立ち上がっていくお話を人は好むものなのだろうか。とすれば「エール」の鉄男もその系譜である。「悔しいことを笑ってごまかすな。このづくだれが（いくじなし）」と裕一に厳しかった鉄男が、裕一が本気を出したときにはピンチを救うのである。確かに、いいキャラなのである。
ちなみに、原始時代からはじまったことが話題の第1話で、「あの裕一が……」と藤堂先生（森山直太朗）の墓に参って感慨深そうにしていたのが鉄男だ。
