脚本賞は「テセウスの船」高橋麻紀氏『親子の必死な思いが届いたからこそ』【ドラマアカデミー賞】
それぞれの状況や心情を整理しながら描くことに苦心しました
――今回、脚本を書いていく上でぶつかったこと、難しかったことはなんでしょうか。
ミステリーとして緻密に練られた原作を、日曜劇場という家族向けの枠でより楽しんでいただくために、真犯人含め設定や展開を変えざるを得なかった部分があり、当然ですが無理や矛盾も生じてしまうので、整合性を取るのに苦心しました。また、心は過去と現在を行き来し、そのたびに周辺の人物の在り様も変わります。それぞれの状況や心情を常に整理しながら描かないと見る人が混乱するのではという恐れがあって、そのあたりも難しかったです。
――高橋さんは2008年の「おせん」(日本テレビ系)からゴールデンタイムの連続ドラマを手掛けています。脚本家を目指したきっかけはどんなことですか?
お恥ずかしいほど単純ですが、テレビでシナリオ学校が紹介されているのをたまたま見たからです。子供の頃から読書や書くことは好きでしたが、脚本家になりたいという発想はありませんでした。ただ、ドラマは大好きで、当時ちょっと人生に行き詰まっていたのですが、ドラマを見て元気をもらったり救われたりしていました。
そんなとき、シナリオ学校の紹介を見て「脚本を書いてみたい」となぜか唐突に思い、翌日、入校手続きをしました。気付いたときは、人生で初めて「本気でかなえたい」と思える夢になっていました。
――今後はどんなドラマを描きたいと思っていますか?
今回、「テセウスの船」という作品に参加させて頂き、ドラマの持つ力を改めて実感しました。日々を懸命に生きている皆さんが、ほんのひととき現実から離れて笑ったり泣いたりできるような、少しでも明日への活力になるドラマを書けたら本望です。
取材・文=小田慶子