“幽霊”登場で話題!“朝ドラ”スピンオフの歴史振り返る レギュラー放送挿入の意図は?
2020年度前期の“朝ドラ”こと連続テレビ小説「エール」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか)。6月15日~放送の第12週は裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の人生を彩る周りの人物にスポットを当てた、スピンオフストーリーが放送され、中でも音の父が“幽霊”として登場した「父、帰る」は話題となった。今回は朝ドラにおけるスピンオフについて、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。(以下、一部ネタバレが含まれます)
様々な角度で登場人物を深堀り
朝ドラ「エール」第12週は特別編。これまでの本編の流れとは別に、音(二階堂ふみ)の亡くなった父・安隆(光石研)があの世からやってくる「父、帰る」、裕一(窪田正孝)と音の憩いの場・喫茶バンブーを営む夫婦・保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の馴れ初めが語られる「古本屋の恋」、音の音楽の大先輩・双浦環(柴咲コウ)のパリ留学時代を描く「環のパリの物語」という番外編が3本立てで放送された。
朝ドラでよく出てくる幽霊話にしんみりし、裕一たちの子供時代に印象的だった久志の子役(山口太幹)にまた会えて喜び、環の過去の辛い恋には柴咲コウの熱演でこれをもっと広げたドラマが見たいと思ったほどであった。
朝ドラで番外編――スピンオフが作られることは珍しくないが、本編に組み込まれるようになったのは、前作「スカーレット」(2019年度後期)からである。「スカーレット」ではドラマも佳境を迎えた第21週(全25週)に主人公・喜美子(戸田恵梨香)の妹・百合子(福田麻由子)と夫・信作(林遣都)を中心にした、カフェサニーで繰り広げられる夫婦の物語が放送された。
脚本は本編の水橋文美江に代わり、喜美子の兄弟弟子役として出演もしていた三谷昌登が書いた。三谷は、「あさが来た」(2015年度後期)のスピンオフ「破れ鍋にとじ蓋」も書いている。
これは来年の朝ドラヒロインに決まった清原果耶演じるふゆと結婚した番頭(三宅弘城)の物語であった。
このようにスピンオフは主として本編の脇役たちの物語を、本編の脚本家を監修として、新鋭の脚本家が描く。本編撮影中、本編のセットを利用して収録し、本編終了後に別な時間帯で放送される。半年見てきた朝ドラファンへの特別なプレゼントみたいなものであった。