<エール>初々しく爽やかだった森七菜&岡部大 近づく“戦争編”を前に心洗われた14週
初々しく爽やかだった森七菜“梅”&岡部大“五郎”
休止時の65回は、古山家に突然、裕一(窪田正孝)の弟子にしてほしいと、田ノ上五郎(岡部大〈ハナコ〉)が訪ねて来るところで終わり、再開初回の66回から70回までは、五郎の弟子入りと、音(二階堂ふみ)の妹・梅(森七菜)の上京エピソードが描かれた。
事前に放送されていた再開のお知らせ映像では、太平洋戦争がはじまり、主人公・裕一の作曲家としての才能が、戦時歌謡を続々生み出していくことになると紹介されていたので、裕一と音の出番が控えめで、裕一と音が若い五郎と梅を見守る側に回っていたことが少し意外だった。「エール」がいつの間にか終わって、新鋭・森七菜演じる、小説家を目指す文学少女・梅が主人公の新しい朝ドラが始まったのかと思った人もいたのではないだろうか。
それだけ森七菜と岡部大は初々しく爽やかだった。裕一と音も明るく爽やかな夫婦だが、朝ドラは結婚して子供ができるとちょっと主人公が落ち着いてしまう傾向にある。やっぱり、仕事や恋に向かってがむしゃらに頑張っているときが盛り上がるのである。
そういう意味では、裕一と音はドラマの序盤で紆余曲折を経て結婚し、長女・華(田乃中愛)も生まれ、裕一の仕事も現在「低め安定」ながら落ち着いている。2階建ての大きな家を維持できるのだから十分安定していると言っていい。
そこへ戦争の足音が聞こえ。戦争と音楽というシリアスなテーマに突入していく前に、今一度、若者の夢や恋の煌めきを描くのも悪くないだろう。再開週がいきなり戦争がはじまりました、となるより、梅と五郎回で良かった気がする。
森は、幼い頃からの夢だった作家の道が拓かれた梅の歓びと揺れる心を、いわゆる天真爛漫というのとはまた違う、テンション低めだが決して暗くない不思議なニュアンスで演じ、岡部は居場所も才能もない孤独をまっすぐに演じた。